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近くのファミレス。
先生はデミグラスのかかったオムライス、俺はハンバーグを注文した。
「俺が払うから好きなの食べてよ」と、デザートのページまで開きだした先生の誘いには首を振った。
そもそも、甘い食べ物はそう好きでもない。
『いや、俺が先生の分まで払うから』
「え」
眉を顰める先生ににんまりと笑って、財布の中身を見せた。
全部で二万。
先生と付き合うことになって、好きなものを我慢してバイト代を貯めた結果だ。
先生側としては貧相な金額かもしれないが、俺にとっては大金である。
「や、やっぱり悪いでしょ。
親御さんにも悪いし」
目の前で手を振る先生は、これは俺の親の金だと思ったらしい。
『違うぞ』と事情を話せば、また恥ずかしそうに。
「だっ、だったら余計にダメじゃん。
春間の金でって」
『俺が良いって言ってるじゃないか』
「でもさ……。
じゃ、じゃあ、デザート、奢ってよ」
眉間に皺を寄せながらも、「ね、これ」という先生の弾んだ声に気を取られる。
見るからに甘そうなベリーたっぷりのパフェ。
「ね?」
ご機嫌取りのためか、こっちを見て悪戯に笑う先生。
『……仕方ないな』
恋人に甘えられて嬉しくない男がいるわけがない。
食事を終えて出てきたデザートに、先生はまるで子供のように目を輝かせた。
普通より長めのスプーンで生クリームを掬い取り、淡い桃色をした唇の開いた先へと送り込む。
堪能するように目を閉じる彼を見ながら、俺は珈琲を啜った。
「甘っ」
『だろうな』
もぐもぐと口を動かし、また口の中にパフェを入れていく。
嬉々とした表情は、さっきまで年がどうこう言っていた人間のする顔じゃない。
その時、先生の頬っぺたにクリームが付いたのが気になって、俺はそれを親指で拭ってやった。
そうして、それをペロリと舐める。
ふと、先生の方に視線を寄越すと。
その顔は真っ赤で。
「い、今」
彼の唇がわなわなと動き出す。
俺も状態をようやく理解して――頬が熱を帯びる、『すまん』と何故か謝る言葉が飛び出る。
「い、いーよ……」
こんなの、ベタ中のベタだ。
漫画とかドラマとか、女が好きそうなシチュエーション。
ああいうのは白けた目で見てしまうのに、自分がその立場になったら途端に恥ずかしくなるなんて不思議なものだ。
お互いしばらくは何を喋ればいいのかが分からなくて、数分後先生の「ねぇ」という言葉で、俺は大袈裟に驚くことになる。
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作者名:男主クリスマス合作企画 x他2人 | 作者ホームページ:http:/
作成日時:2018年11月11日 17時