酔狂な賭け事【BL】【男主】

第八話 ページ9

飛行機を降りた後は、やっぱりおつきの人の車に乗せられての移動。

黒塗りのリムジンは居心地が悪くて、窓の外の異国の地なんて見る気にもならなかった。

かっちりしたスーツにサングラスをかけた従者の人は、何度見ても無表情で本当に人形みたいだ。

「若」と、極道の男を呼んだりしなければ本当に人間だとは信じづらい程に。


「若、この後はご自宅に戻られるんですか」

「ん、あー、いや、本家の方に話があるからそっちに寄ってくれ」

「分かりました」


スーツ男は頷きもせずに、ハンドルを右に切った。

身体がそっちに傾いた時、極道の男に肩を抱かれる。

『ちょっと』と言おうとして彼を見ると、男はこちらを見向きもせずに前を見据えた。


「……大奥に視察の件を話してくる」

『はい』

「……逃げるなよ」

『……逃げませんよ』


『貴方様の獲物ですからね』と心の中で悪態をつく。

べ、と小さく舌を出しても、男はこっちを向かなかった。


そもそも、この男は俺をこっちに連れてきて何をしたいんだろう。

オーナーに歯向かってまで。

俺がこの人の側にいることでこの人のメリットになることがあるんだろうか。

どういう感情で、俺のことを「娶る」なんて言ったんだろう。


理由はたった、「気に入った」。

それだけなのに。


「俺のことが好き」って、そんな言葉は言ってくれそうもないのに。

ねぇ。


どうして。

*
そういう系シーンは大分後です

ごめんなさいでも私が一番キスシーン書きたい

他作品の出張版で載せるかもしれないですん


p.s.

ディーラーくんの口調を直しました

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