第十話 ページ11
『えっ』
先を行ってしまった極道の男を追いかける足を止め、振り返った。
見ると、一人のおつきの人が俺を見て頷く。
その人は白い手袋をした手で、サングラスを外した。
『……俺?』
「ええ、貴方です。
本来であればこのサングラスをつけて話すことがルールなのですが、貴方様はこちらの方が話しやすいでしょうと思って」
そして男はそのまま、サングラスを胸ポケットにしまった。
『……何か、俺悪いことしちゃいました?』
俺はこの国も、この「極道」と呼ばれるマフィアの世界も良く分かっていない人間だ。
どうすることが正しくて、何が間違っているのか。
文化の違うこの国では、イタリアの「取り敢えず突っ込め」という教訓は参考にならない。
怒られる、そう思って身を固くした。
すると、おつきの人は「はは」と笑った。
「そう固くならないでください。
何もしませんから」
『何も、しない?』
「ええ、……話をしたいのは、若のことです」
彼はそっと目を伏せた。
「若の本当の父親は、貴方のカジノのオーナーの父親と同じです。
今は何処かに姿をくらましているようで、若は秘密裏で彼を探しています。
……若の父親は、若が幼い頃にいつの間にか組から去ってしまったのです。
手紙も何も残さず、ただ彼の荷物がいつの日か全て消え失せていたのです。
若の母親……、大奥様はそれから直ぐに別の男と婚約しました。
何が原因かは私には分かりかねませんが……」
おつきの人は、ゆっくりと息を吐いた。
「そのせいであるかも知れませんが、若は愛情表現がとても苦手な方なんです。
奥様が不安に思われることは多々ありますでしょうが、若は奥様のことを愛してらっしゃいますから」
『……どうして、そう言いきれるんです』
「賭けの際、あんな必死な顔をした若は、私は見たことがありません」
きっぱりと、彼はこう言いきった。
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ぱあだよ - ア"ぁ"ずぎいいいいい!!!!!! (2020年8月12日 22時) (レス) id: c34795aa39 (このIDを非表示/違反報告)
空弥@ロザリオ(プロフ) - BLACKMOONさん» 返信遅くなりました、ありがとうございます!いえいえ、妄想を詰め込んだだけですよ〜w (2018年12月8日 10時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
BLACKMOON - 物凄く面白かったです。私も最近文をあげ始めたのですが、まだまだだな〜と思いました! (2018年12月4日 20時) (レス) id: 1bda2ccaaa (このIDを非表示/違反報告)
空弥(プロフ) - soraくんさん» 返信遅くなりました、ありがとうございます!BL好きじゃない方に面白いと言ってもらえたのはめちゃくちゃ嬉しいです…… (2018年10月9日 0時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
soraくん(プロフ) - すごく素敵です。私はBLが好きではないんですけどこれは面白いです!!漫画化して欲しい…… (2018年9月24日 19時) (レス) id: 0ca2962a8b (このIDを非表示/違反報告)
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