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三章 濱野時雨(マカロン少女) ページ5

「こっち、パスパス!」

たかが中学生同士のサッカーで騒ぐ同級生に混ざり、取り敢えず動き回る。
正直な所、サッカーは苦手だ。俺は体力が圧倒的に少ない。自負するなら、スピードだろうか。短距離走くらいなら自信がある。
兎に角、何が言いたいかというと、憂鬱なのだ。
仲のいい友達に誘われたから参加してはいるが、ボールなど回ってくるわけがない。これなら、図書室で小説でも読んでた方がマシだった。

チッ、と舌打ちして、ボールを取り合う奴等から目を背ける。
「――あ、危ない!!」
勢いがついたまま急に軌道を変えたボールは、容赦なく俺目掛けて飛んでくる。
蔦が絡んだように動けなくなった足を一瞥し、考えることを放棄した頭が唯一思ったのは、

「こりゃ駄目だ。」

――ふと目を開けると、みんなが呆然とした様子で此方を見ている。
「……何?みんな、どうした…………」
ビクビクしていた同級生が、我に返ったように叫び狂い、一目散に逃げ出す。
「……ば、化け物!」
「こっち来るな!」

意味が解らない。なぜ急にそんなことばかり言うのか。いじめか?
ひゅっ、と風が吹くと、何かふわふわしたものが左手を撫ぜた。よくよく見てみると、それは狐の尻尾だった。
まさか、と思い、窓に自身の体を映してみると、金色の、狐の耳と、9本の尻尾が生えていた。

「これ……もう学校にも、家にも居られないなぁ」
ははは、と自嘲するような乾いた笑い声が響く。
俺が居場所を失った、食欲の秋の事だった。

気が付くと、俺は妖童が住まう社の前にいた。
厳めしい感じがするけど、どこか優しい感じもする。
――と、綺麗な翼を背負った男性がやってきた。

「君は、誰かな?入居希望とか?」
「……え、あ、俺は、濱野時雨(さいのしぐれ)って言います。妖童なんですけど……みんなにバレちゃったから、家にも居づらくて」
「あぁ、成る程ね。じゃあ、引っ越しするんだね?」
「あ、はい」

なんだかトントン拍子で話が進んでしまったが、家や学校で何も考えずに過ごすよりかは楽しそうな生活である。
「親不孝でごめんね」

俺は、もう帰らないよ。

四章 霜月夜宵(つきみや)→←二章 覚知 綾 (蟒蛇。)



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つきみや(プロフ) - すみません!しばらく更新出来ないです、一応報告します (2018年8月24日 14時) (レス) id: a272fad097 (このIDを非表示/違反報告)
○マカロン少女●(プロフ) - 更新しました! (2018年8月22日 9時) (レス) id: f4775194ad (このIDを非表示/違反報告)
○マカロン少女●(プロフ) - 更新します! (2018年8月22日 6時) (レス) id: f4775194ad (このIDを非表示/違反報告)
つきみや(プロフ) - 更新して頂けないでしょうか…?さすがに、連続で更新するのは気が引けるので… (2018年7月26日 22時) (レス) id: a272fad097 (このIDを非表示/違反報告)
*にゃふ*(プロフ) - これは…更新しても大丈夫でしょうか??? (2018年7月11日 15時) (レス) id: 7a5cc277b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藍雲 x他4人 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年6月8日 19時

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