第二話 ページ2
この世には男と女の他に、三つの性別が存在している。
一つは圧倒的優位な地位に君臨する「α」。
平均的な能力を持つ「β」。
そして、いいスキルを持っていてもその性別が故認められ難いのが「Ω」だ。
俺はその中で、「α」に属していた。
この性別はいい。
好きなことが自由にできるし、αだということで贔屓目で見てもらえることも少なくはない。
自分のやりたいことを貫ける人生に、俺は満足していた。
強いて言うなら――
この欲に塗れた感情をコントロールしなければならないことか。
先ほど話したように、三つの性別の中で一番下のランクに位置する「Ω」には、俺たちαを誘惑する甘い香り――フェロモンを纏う時期が来る。
これは彼や彼女らが意識して発するものではない。
定期的に訪れる、終わりのない戒めのようなものだ。
それが来れば体力が落ち、身体が少し熱を持ったような感じになるという。
その能力でαから金を搾り取るような奴もいるらしいが、大抵の奴は平穏に暮らしたいはずなんだ。
αは色んな奴に手を出せるけれど、Ωはたった一度きりの人生をを簡単に壊していいはずがない。
だから、俺はΩのその匂いには反応しない素振りを繰り返しているんだ。
……その癖、欲は隠せないんだけれど。
「だからお前は何時まで経ってもどーてー何だよ〜」
飲み会の帰り、酔った同僚の言葉に苦笑いする。
「お前だってさぁ?
ああいうあまぁい香り嗅いだらさー、押し倒してぐちゃぐちゃにしてやりたくならねえ?」
「いや……」
「だっからだってば!!」
「ほら、落ち着け、ここにはΩもいんだからさ。
あ、お前あっちだろ」
「んえー?」
悪酔いした同僚に重たい溜息を吐いてから、タクシーを呼んだ。
社内にソイツを詰め込んで、料金を払う。
車が走り出したのを確認して、居住地であるアパートのほうへ足を向けた。
「ったく、好きでΩに手ェ出さないわけじゃねぇっつーの……」
かつん、革靴が音を立てる。
自分の部屋の階まで着いた時、ぶわっと濃密な甘い匂いがした。
「何だ……!?」
近所の奴がそういう時期でも来たのかでもと思って、眉間に皺を寄せる。
自分の部屋の扉のほうを見て、固まった。
「……マジかよ」
そこには、栗色の髪をした男が扉の前で倒れていた。
甘ったるい匂いを垂れ流して。
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空弥(プロフ) - 桜坂さん» わああああ、よきですよきですっ。電車でイチャイチャしてるところめっちゃ書きたいです……。ありがとうございます、更新ゆっくりですが、お付き合いいただけると嬉しいです (2018年11月10日 21時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
桜坂(プロフ) - 以前コメントさせて頂いたものです!デートの案なのですが遠出して海を見に行くなどもいいのではないでしょうか?電車の小話とかも出来ますし、それとこれからもゆっくり頑張ってください (2018年11月7日 19時) (レス) id: 96c3d36cf4 (このIDを非表示/違反報告)
蒼紫(プロフ) - 希羽(  ̄▽ ̄)さん» 18↑のほうに書いてます。オブラートに包んでないので(汗)18になってからまた読みに来てください! (2018年9月9日 14時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
希羽(  ̄▽ ̄) - 第17話の間の話って、18↑ですか? (2018年9月9日 12時) (レス) id: 0d606e3b63 (このIDを非表示/違反報告)
希羽(  ̄▽ ̄) - もう最高ですぅぅぅ、、、。 私まだ18↑読めないんですよね、、、、。残念過ぎます、あと何年だろう。 (2018年9月9日 12時) (レス) id: 0d606e3b63 (このIDを非表示/違反報告)
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