Diabla姫と悪魔執事 :2章【u/s/s/s】

マニアな愛 ＊14 ページ32

うらたさんは月下美人に他の花言葉があるとそう言った。

果たしてどんな言葉なのか、出来ればこれ以上惨めな思いはしたくないと思いながらギュッと目を閉じ話の続きを待つ。


「お前に似合う花言葉は”強い意志”」


静かに、でも私に聞こえる声でうらたさんは言った。


(なにそれ…そんなの誰にでも当てはまるやつじゃん…)


やさぐれた私の心はそんな事を思ってしまう。
ほんの少しでも特別な何かを期待してしまった自分が恥ずかしい…。

黙ったまま動かない私を彼が心配そうに見つめていることは空気で分かる。

心配かけてる事、嫌な態度をとってしまっている事、謝らなきゃいけないのに

彼の顔を見てしまったら泣いてしまうかもしれない
汚い言葉を浴びせてしまうかもしれない
そう思うと後ろは振り向けなかった。


「お前をずっと見てきた。」


その言葉はまるで私の心のうちを見透かした様で


「初めて見た時のお前、今よりもすっげぇ小さくて弱そうで。そんなお前が泣きながら孤独に立ち向かってここまで一歩ずつ歩いてきたのを俺は、俺達は知ってる。なぁ、お前はどうしてここまで来れた?」


遠い昔、眠れない夜に母親がしてくれた昔話の様に優しい声で、うらたさんは私に問いかける。


その優しさに耐え切れなくて思わず彼の方を振り返った。
目を見て話したいのに目の前の彼は涙で滲んでよく見えない。答えたいのに嗚咽が邪魔をして言葉にできない。


「知りたかったんだろ?ここの事、俺たちの事、何よりお前自身の事。」


私の頭に手を置いて優しく撫でる。
その行為はまるで“言わなくてもちゃんと分かってるよ”って言ってくれている様で止めどなく涙が溢れた。


「お前は孤独、恐怖いろんな感情と天秤にかけても進む事を選んだ、知る事を選んだ。知っていく中で傷ついても初めて向けられた好意がどんな形でもそれを受け入れる事を選んで相手を救った。それが強さじゃねーなら何を強さっていうのか俺には分かんねぇ。」


この世界に来ていろんな事に触れて

戸惑って、時に泣いて、許して、ここまで来た。

その全てを肯定するうらたさんの言葉に心が救われていく。


目元を乱暴に拭い今度こそ真っ直ぐ彼を見る。
ようやく合った目を見て私に言い聞かせる様に、断言して彼は言う。

「強い意志。確かにあるよ、お前の中に」

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