君想う夢・君恋し花

愛を売る人 … ４ ページ5

《太輔、お前もこの藤ヶ谷の血を引く者なら、この難局を乗り切るために相応の力を尽くすべきだとは思わないか？ 》

１３歳のオレにはその意味がよく分からなかった、

記憶もほぼ無い頃に、母親から引き離され連れてこられたこの藤ヶ谷家…元華族の家系であるこの家の住人は、全てが‪α‬種だと教えられた

そして、妾腹のオレも出生時の診断で‪α‬だと認められていた

「優秀な人材は一人でも多い方がいい」親父のその一言で、オレは本宅に連れてこられ、文字通りの英才教育を受けさせられた

「太輔さんは、兄上様以上に優秀です」

親父付きの御厨は、よくそう言ってオレを褒めてくれた、その御厨も親父が病の床に着いてすぐに、兄貴に慰労退職という形で藤ヶ谷を追い出された

出ていく最後の日…大きな手でオレの頭を撫でながら
「太輔さん、あなたこそ稀代の‪α‬です、どうかその誇りを忘れずにいて下さい、よろしいですね」
そう言って、優しく微笑んだ、

何社も会社を経営していた親父は仕事で忙しく、オレのことなど引き取るだけ引き取って、その後はほぼ放置…、

本宅ではオレは厄介物、唯一御厨だけがオレをこの家の人間として扱ってくれていた

「誇り高く生きるのですよ、貴方にはその価値がある、そうすれば貴方の前には必ず道が開きます…」


その後の御厨の行方を、誰も知らなかった…
生きてんのか死んでんのかも…

でも、死んでる方がいいのかもな…
今のオレを見たら、御厨…呆れ果てて愛想尽かすだろうし…

誇り高く生きろとか、ンなの無理だし…


どうせオレには、金を持ってるオンナをこの顔とカラダで虜にして、毟り取れるだけ毟り取るハイエナみたいな生活が似合ってる…


人としての誇りなんか、クソくらえだ

ましてやαの生き方なんか出来るわけない…


《お前は兄者からこの店に売られたんだよ》
《コレが証拠…ほら書いてあるだろ？ 》

法外な金額が提示され、兄の筆跡で署名された借用書…、たった一枚の紙が、オレの人生を変えた…

粗末な着物を着せられ、その日から禿としての日々を送った

その当時の太夫に付けられ、身の回りの世話をさせられる、ソイツが気に入らなければ容赦なく飛んでくる鉄拳にカラダは傷だらけだった

顔には絶対に手を出してこない卑怯なやり方、屈辱でしか無かった

「悔しかったら《ミカド》になればいい、そうすれば、誰もお前に手は出せない」


渉の言葉に、オレはこの世界でトップとして生きることを決意した

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