君想う夢・君恋し花

愛を売る人 … １０ ページ11

「良かったねミツ、アトが目立たなくなって！」
「うん…」

オーナーから客に付けられたアトを消してこいと言われて、七星通りの《肌直し》と言われるサロンに行かされた、施術はユリアさんという女性、来るのは3回目、前はトモが急に予約を入れた時の応急処置だった

「大変よねぇ、花魁って言う立場も」
「仕方ないです、…消えそうですか？」
「スチームパックとオイルマッサージかな、でも鬱血性だから、どこまで薄くなるかなぁってトコ、完全には消えないわね、…今回も例の太客さんの来店？」
「……」

どう返事をすればいいのか…、言葉が出ないオレ、「ゴメンね、立ち入ったコト聞いちゃった、じゃ始めるね」とその場の空気を直ぐに変えてくれた

「宜しくお願いします…」

そして背中にスチームが当てられる、アロマオイルも足されてるから、部屋はしばらくするといい香りで満たされてきた

「じゃマッサージするね」
「はい…」

スチームに入れたのと同じ香り…直接肌に付けるから一層濃く香りが立ちのぼる

「いい匂い…」
「でしょ？私が調合したの、ベルガモットとイランイランよ、心を落ち着けてリラックスする効果があるの」
「へぇ…、でも確かに…」

フワリと鼻先に香る甘い匂いに、ホッと体の力が抜けるような気がした

「今、HEAT？」
「え、分かりますか？」
「うん…私は‪α‬だから、でも同性にしか反応しないから安心して？…隠しきれない香りがあるよね…このアロマで誤魔化せたらいいんだけど…」

そう言ってユリアさんは、オイルを塗りつけた背中をマッサージし始めた

30分程続けられて、「はい、とりあえず明るい照明の下じゃ無ければ、目立たなくはなったと思う、おしまい！」とキレイな口角を上げた

「ありがとうございます」
「うん、…気をつけて帰るのよ、お付がいるなら大丈夫かな？」
「ええ、ご心配ありがとうございます」

そう言って、オレは部屋を出た

「花魁？」
「はい？」
「無茶な扱いが続くようなら、またいらっしゃいね…」

心配顔のユリアさんに、「ありがとうございます」と言って、オレは待合に控え室にいるニカのトコに戻った

「ミツ、お疲れ様」
「うん、お前こそゴメンな、店の仕事もあるのに着いてこさせて」
「全然！久しぶりのお出掛けで、めっちゃ嬉しい」
「そか、なら少し見物して帰るか？」
「ウソいいの？」
「ん、オーナーもそこまでうるさく言わないだろ」
「じゃあさオレ、弟達へのお土産買ってもいい？」

「ｸｽ、いいよ」

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