I wish to be your only one … L.O.V.E

Precious Lover … ３２ ページ33

「オレ、迷惑かけてばっかだな…」

父さんもオレも不在の事務所…、今、何か大きなトラブルあったら…、何より樫原邸は…考えなきゃいけないコトが有り過ぎて、何をすればいいのか分からなくなってくる

点滴が繋がれた右手に苛立ちが湧くのを止められない

「太輔にも連絡取ろうと思ったんだけど、アメリカは真夜中だから…、もう少ししたら夜が明ける、オレから連絡するよ」

裕太の言葉に、オレは跳ね起きた

「太輔に！？そんなのダメだって！！」
「え、なんで！？」

裕太が戸惑いの表情全開でオレを見ていた

「アイツ今、アメリカで大きな仕事をしてる、こんなコトくらいで呼び戻す必要なんか無い！お願い裕太、太輔には何も言わないでくれ」

クロフォード会長直々の依頼、太輔の采配一つで何十億という契約が動く…、こんなケガくらいで戻らせるなんて出来る訳ない

跳ね起きたオレをゆっくりとベッドに戻しながら、裕太が宥めるように微笑んだ

「そんなわけにいかないよ、太輔には戻ってきて貰おう？、第一ひろがこんなコトになってるの黙ってなんかいたら、オレが太輔に恨まれちゃうよ、絶交とかされたらやだし！」

見慣れたフワフワした笑顔でそう伝えてくる裕太だけど、眼差しは切羽詰まった色を湛えていた

「いいって！、こんなの大したことない」

パッと見、両手には一ヶ所ずつの包帯しか巻かれてないし、指先までちゃんと動いていた、足だって動く、病人ぽいと言うなら点滴のチューブが繋がれてるくらい…

長瀬棟梁が庇ってくれたお陰だ…退院したら直ぐにお礼に行かないと…そして、早く事務所に戻りたい…

思いばかりが空回りしてしまい、ため息をつきオレは窓の外に目を移した

「ひろ、担当の先生がね、家族を交えて今の容態とこれからの治療方針を話したいって言ってる、だから太輔は呼ぶよ、お互いに何かあった時、一番に呼んでもらえる存在になりたいって願って二人は籍を入れたんだろ？、なら今がその時なんじゃないかな…」

裕太の表情からフッと笑みが消え、代わりに訴えかけるような視線が向けられた、表情の変化にオレの胸に大きな不安が押し寄せる

「なんでそんな…オレ、何かあるの？」

この数ヶ月の止まない痛みが、じわじわとオレの恐怖を掻き立てていた

「ひろ…」
「教えてよ裕太！」

思わず裕太の手首を掴んだ時、ドアがノックされ濃紺のドクター着を着た背の高い男の人が入ってきた、

「新海先生…」


「玉森先生、付いててくれてありがとう」

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