LOVE CASTE … 恋哀階級 vol.２

CASTE … ８９ ページ43

｢ねえトモくん、明日病院お休みだからどこか出かけましょ！｣

宏光の家から戻り、服を着替えていたオレに、桜来がいつものお強請り顔で言ってきた

｢…体調は？つわりはツラくないの？｣

ネクタイを外し、シャツを脱ぎながら聞くと後からオレに抱きついて来る…正直、鬱陶しい…
この手にはついさっき抱きしめた宏光の肌の感触がまざまざと残ってる…その香りも…

他の人間の温もりなんか、欲しいとも思わなかった、けど…オレは夫だ、そして桜来のお腹に存在してる《命》の片割れでもある

｢うん、最近は大丈夫、ちゃんと食事も取れるようになったから…ねえ、明日外に連れてって？｣
｢いいよ、…どこか行きたいトコあるの？｣
｢うん、あのね、プラネタリウム行きたい｣
｢プラネタリウム？｣
｢そう、あ、ねぇトモくんのケータイ貸して？私ココに行きたいの！｣

嬉しそうな顔して、オレのケータイをスーツのポケットから取り出すと、手を引っ張ってソファに座らせる、そしてオレの隣に座って画面をタッチしながら、検索を掛けていく

いわゆる体の良い《スマホチェック》だ

そんな桜来を見ながら、聴こえないように鼻で笑っているオレ…


桜来、どんなに触ったってキミが疑ってる《現実》なんて何一つその中には無いよ…なのにホント笑える…

自分の夫が同性を愛して、さっきもこの腕に抱いてきた…なんて知ったら、この世間知らずのお嬢様はどんな顔をするんだろう…泣き叫ぶのか、それとも烈火のごとく怒りを露わにするのか…？

それならそれで、いいような気もする…

優しい夫、仕事熱心な夫…義理の父親を尊敬し、いずれこの大病院を継ぐ優秀な遺伝子を残す為の……

そこに《愛》なんか、小指の先程も存在していない


オレの《愛》は、この世でたった一人…その人にしか向かわない…


結婚して初めてそんなコト気付くなんて…今更の間違いに、オレは気が狂いそうだった

どうして…あんなにも愛していたのに手離してしまったのか…、宏光が桜来との結婚に賛成したとは言え、なんでオレはあの時…


｢難しい症状でも治療できる高度な病院を作りたい、患者さんを家族の元に返してあげたいっていうお前の夢が叶うんだろ？、相澤教授に見込まれたんだ、結婚しろよ…お嬢さんも可愛くて優しい人だって評判だ、迷うことなんか無い｣

宏光もオレも早くに両親を無くして、家族と言うものに焦がれていたのも事実だった…




けど…《家族》ってなんだ？

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