LOVE CASTE … 恋哀階級 vol.２

CASTE … ５２ ページ5

顎に手を掛けられ、背けた顔を無理やり目を合わせるように荒々しく向けられる…

その、ギラつく瞳…
その瞳の奥にある独占愛という名の枷…

オレを屈服させ、虚無感すら感じさせるトモの《愛》は、雁字搦めにオレを縛りつけた

逃げられない…

何もかも…無力な自分が惨めに思えた…


｢…宏光、泣くな…｣
頬に触れる指が、拭うように目の下を撫でる
けど、そんな優しさも今は欲しいとは思わなかった…

｢もう…いい、わかった…｣


ポツリ…と呟いた時、ドアがノックされた


トモの顔が瞬時に、医師に戻る
ポケットからハンカチを出し、オレの手に握らせると、そのままオレから離れドアを開けた

いたのは、若い男性のドクターだった

｢…柏木か、…今、大事な契約確認の最中だ、戻るまで呼びに来るなと言っておいたはずだけど｣
｢あ、…申し訳ありません…入院患者さんたちの回診の時間なので…院長が呼んでくるようにと…｣
｢院長…？回診なら他のドクターで間に合うだろう…ったく、人使いが荒いな…わかった、すぐ戻る…準備をしておいてくれ｣
｢はい、承知しました……あの…｣

ココではトモに逆らうことなど出来る者は誰もいない…そして、ソレにはオレも含まれていた

赤くなった目を隠す様に、オレはそのドクターに背を向け窓の外を見た

明るく晴れ渡る空は、オレの心とは真逆の透明感のある蒼色をしていた…

｢…まだ何か？｣
｢そちらのお客様…ご気分が悪いのであれば…｣

｢心配ない、私が付いている…キミは戻りなさい｣

その子が明らかオレを気にしてるのがわかる…
トモは声に若干の苛立ちを含ませ、その場から去ることを促した


｢はい、…では医局でお待ちしています｣
｢了解だ、院長にはすぐに戻ると伝えてくれ｣

そう言うと、トモはドアを閉めまたオレの所に戻ってきた


｢…新薬の臨床試験、…いい返事を待ってて｣

｢…はい、宜しく…お願いします…｣

俯く様に頭を下げ、トモの側を通り抜けようとした時、手首が掴まれる
もう、抗う気力すらオレには残っていなかった


｢…また連絡する…｣

小さく頷き、オレはそのまま部屋を出てエレベーターに向かった…

地下駐に戻り車に乗り込んだ途端、堪えていた感情が一気に溢れ出た…


｢…っ、ｸ…ふ……っ、…ク…ソ……っ｣



とめどなく溢れる涙は…何をオレに伝えてるんだろう…




絶望感…





オレの感情には、それしか無かった…

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