LOVE CASTE … 恋哀階級

CASTE … ３８ ページ40

｢キタミツ…おい、起きろって｣

肩を揺らされ、オレは浅い微睡みを追いやり目を開けた

目に入った顔は…

｢…横尾さん…｣
｢気持ちよさそうに寝てんの起こして悪ぃんだけど、もう閉店なんだ｣

閉店…そか……薄ボンヤリとしたアタマを振って、オレは現実に目を向けた
１０席程のバーカウンターには、もうオレしかいない…

｢…ゴメン、オレ…商売のジャマしちゃった｣
｢フフ、そんなコトねぇよ、雨も降りそうだしな…もう帰った方がいいぞ｣
｢そうなの？｣
｢なんか遠くでゴロゴロいってるわ、タクシー呼ぶか？｣
｢ん、いいよ…なら帰るわ、ご馳走さん｣

いつもと同じ額のお勘定済ませてふわぁとアクビを漏らし、オレはんーと伸びをすると席を立ちドアに行きかけた

｢キタミツ｣…と声が掛かる

｢ん、なに？｣
｢お前さ、いつまでも哀しい恋ばっかすんな…｣

横尾さんは、唯一オレとトモのことを知ってる人だ…トモが桜来さんと婚約した日、堪らなく苦しくて寂しくて…持って行き場のない感情を抱えたまま、たまたま開店したばかりのこの店にフラッと立ち寄ったのがキッカケ…

酒強くないのにガンガン煽って…開店初日で客はオレ一人なのをいいコトに、横尾さんに絡みまくって話聞いてもらった

ドン引きされても仕方ない話を、横尾さんは優しい顔して何も言わずにうんうん…て聞いてくれた

そして、最後に氷漬けのライムの入った水を渡してくれて｢ココでいいなら、いつでもおいで｣と言ってくれた、この店は、オレの心の隙間を埋めてくれる場所だった…


｢また来るね…｣

それだけ言って店をでた

夜空は雲に覆われていて、輝くものは何一つ無い…まるで今の自分の状況と同じだ

オレとトモの恋は…何も生まれない
ただただ、誰かを傷つけるだけの恋だ

それがわかってて、それでもその手に触れられることをオレは拒否できなかった

多分…心のどこかで、オレは桜来さんを同情という名の憐れみで見ていたから…あの人はカタチだけの存在、トモの全てを満たせるのはオレだけって…けど違う…

桜来さんは、オレとトモの間には天地がひっくり返っても出来ない《命の育み》をやってのけた…

結局…裏切りのツケは自分に回ってくる…

《オレはお前を絶対離さない…》

会わないコトが可能なら忘れられるのかもしれない…けど、それは不可能だ

《LOVE CASTE》の果ては、オレの心からトモを消すことを許してはくれない


｢ﾍﾍ…拷問じゃん…｣




不意にポトリ…と雫が頬に落ちた

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