LOVE CASTE … 恋哀階級

CASTE … ３４ ページ36

｢初めまして、北山くん…ウチの智久と大学が同じと聞いたよ、隣の経済学部だってね、私ともキャンパスで会ってるかもしれないね｣

｢…何度かはお見かけしています、相澤教授はいつもお忙しくされてました｣

｢そうか、まあ大学では教鞭をとる傍ら患者さんも見ていたからね、中々目まぐるしい毎日だったよ｣

｢はい、教授は時間には特に厳しいと伺っていました｣


世間話程度の会話…けどオレが相澤院長と話をしているのを見てる2組の視線は全く違っていた

木村常務・櫻井部長が好意的な視線を向けているのに対して、トモはその顔に苛立ちのような険しさを湛えていた

懐かしそうに大学の話を続けようとした相澤院長にトモが遮るように｢院長｣と声を掛けた


｢懐かしいのはわかりますが、木村常務もお忙しい方です、そろそろ本題に入りましょう｣促すようにコチラ側にも視線を送ってくる

｢これは申し訳ない、そうですね、楽しい思い出話はまたの機会にしましょう、では契約書類を見せて頂きましょうか？｣

｢どうぞ、そちらにご用意しております、そちらのご意向に沿って北山が練り上げた契約内容です、いかがでしょうか｣

テーブルに置かれたブルーのファイルを広げ、相澤院長は真剣な眼差しを一ページ毎捲るに見せ、時折隣のトモ何かを確認するように話をしながら読み進めていた

ソレを固唾を呑んで見守るオレ達…

30分が経とうとした頃…、ファイルを閉じた相澤院長が｢これでけっこうです｣と契約締結の一言を口にした

木村常務始めコチラ側三人の口から安堵のため息が漏れる

ソレを相澤院長は軽く微笑みながら手を差し出した


｢細かい点までよく纏めて下さいました、満足です｣
｢その言葉を頂けて、何よりです｣

硬い握手を交わす相澤院長と木村常務…そして、相澤院長は櫻井部長、そしてオレにも手を差し出してくれた

ぎゅっと握られた手…
緊張が解れたような気がした

ふと気づいたトモの視線が、会った時より柔らかみを増しているように思えた

トモもホッとしたんだろうな…


｢北山くん、キミがウチの担当者らしいね、私も直接の教え子ではないが少なからず縁のある君に担当してもらえてとても安心だ、木村常務からも君の実力と実績は聞いている、智久からのの推薦もあるし、今後も宜しく頼みたい｣
｢いえ、私こそ…このような立場に置いてくださり身の引き締まる思いです｣



｢春には孫も産まれるのでね、徐々に院長権限も智久に任せていこうと思ってるんだよ｣

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