LOVE CASTE … 恋哀階級

CASTE … ３３ ページ35

用意されたのはいつもの会議室ではなく、最上階の院長室隣の応接室だった

広々とした部屋の窓は可能な限りの大きさをデザインされていて、まるで絵画のように外の風景を切り取っていた、オレの心とは真逆…抜けるような青空がそこに広がっていた

｢まもなく相澤院長と山下が参ります、どうぞコチラでお待ちくださいませ｣

受付のコンシェルジュはフワリと微笑むと、一礼をしてて出ていった

｢凄い部屋だな…｣
｢儲かってるんだろう、なんせこの病院のメイン患者は自由診療選び放題のセレブだからな…｣
｢そうですね、それに加えて多くの大学病院とのパイプもある、まさに日本最先端の医療器具と技術がココに集結してる…ということですか｣
｢そうだ、北山には本当によくやってくれたの一言だ、交渉相手の山下医師はこと仕事については《絶対零度》のプライドの持ち主だ、気に入らない相手には氷点下の対応だそうだし…｣

《絶対零度》《氷点下》

オレの知ってるトモは、ちゃんと人の温もりを持ってるのに…

触れる唇も手のひらも、暖かい…

この病院にいる時のトモは、オレの知ってるトモじゃない…幸せでは、ないんだろうか

また堂々巡り…


頭を軽く振って、オレはアタッシュケースから今日の契約に必要なファイル一式を取り出し目の前の応接机に、2組を並べて置いた

約束の時間から30分後…

ドアをノックする音が聞こえた


｢お待たせして申し訳ない…｣

初老の男性の声がして、正面のドアが開いた


｢カンファレンスが長引きました、大変失礼しました｣


白衣を着た二人…

先に入ってきたのが、この病院の院長《相澤伸之》そして、その後から濃紺のドクター着の上に白衣を纏い、圧倒的なオーラを醸し出し入ってきたのがオレのトモ…《山下智久》だった


席から立ち上がる三人に、相澤院長はオレが大学時代に知ってる、とても人好きする笑顔を向けてきた

｢お忙しくて何よりです、この度の私共との契約、数多の中からお選び下さり本当に感謝しております｣

木村常務の挨拶に合わせて、櫻井部長とオレも頭下げる

チラリと見えたトモの顔は、いつもより少し疲れているように見えた、目の光が少し弱い…
何かあったのか？…些細な変化も見てしまう自分にふと自嘲的な笑みが浮かぶ


｢何をおっしゃる、コチラこそそちらの開発能力には舌を巻いております、相変わらず素晴らしい技術力をお持ちだ、そして交渉能力もね！｣


相澤院長はそう言って、末席に控えていたオレを見た

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