One Kiss！！…２

チャラくNIGHT？…７３ ページ25

｢へえ、いいな、オレもいつか日本離れて色んな世界を見てみたい、…ホント言うとな、親父はオレを無用の人間だと思ってるから、親父がトップの間は絶対にムリだと思うけど、兄貴の代になったら何かが変わるかもしれないってずっと思ってた、こんなオレでも兄貴の役に立てることがあるんじゃないかって、英語だけは…ちょっと頑張ったんだよな｣

照れくさそうに、そう話す宏光…


知ってる…

星川さんが住職に話してるの、聞いてたから

｢宏光さんは、きっと宏哉さんの力強い右腕になって下さると思います、宏哉さんとは違う視点で物事を見える方です、社長もいつかその事に気付いて下さると信じています｣


アナタに近づきたくて…同じ何かが欲しくて留学したんです…アナタはいつも私の先を行く人だから、追いつけなくなるのがイヤだから…


すぐ隣でヒロを構ってる宏光を横目で見ながら、こんなにも近くにいるのに、手を伸ばせない切なさを感じていた…

｢…いつか、そんな日が来ると良いですね｣
｢ん？｣

｢お父上に認められて北山さんが会社と社会に貢献できる日が…、もしかしたら、もうすぐそこまで来てるのかも知れませんが…｣

｢オレはその器じゃねぇよ…兄貴、一体どこにいるんだろう…｣

そして空を見上げ視線を馳せる…


このまま宏哉さんが戻らなければ、宏光が次期社長になる…そうなれば、もう本当に自分には手の届かない人に行ってしまうんだ…


だけど、僧侶として今この人に伝える言葉はこれしかないから…

｢北山さん、自分に自信を持ってください、アナタは決して宏哉さんに劣ってなどいません、私は僧侶です、ウソは嫌いです｣

ウソは…嫌い…
そう、コレは事実だ…

｢プッ、ｸｽｸｽ…そか、なら安心してその言葉貰うな！ありがとな、藤ヶ谷太輔！｣

屈託の無い宏光の笑顔に、思わず自分の顔も綻んでしまう、この人の笑顔は、とても可愛い…

｢どういたしまして！｣

そう言うと、宏光はまたケラケラと楽しそうに笑った
静かな境内に、二人だけの声が空気に溶け入る…

｢じゃまた明日な、ヒロ、もう飼い主に戻れ、オマエもありがとな｣

胸元に帰ってきたヒロは、眠そうな顔をしていた

｢じゃ、おやすみ｣
｢お休みなさい…｣


宏光の背中を見ながら、ふと分からなくなる…
ホントの自分はどっちを望んでるんだろう…


《別離》なのか《邂逅》なのか…


答えは出ない…

不意に宏光が振り返った




｢明日、花畑行くわ！約束な！絶対！｣

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