雪華 … Snow Crystal ５

RHAPSODY：１１ ページ25

漏れ聞こえてくる関西に拠点を置く《無双組》の良からぬ噂…

７年前、僕ではなく太輔を《如月》の跡目として襲撃してきた《十六夜》は、そのコトを格好のネタにした警察機関の取り締まりとガサ入れを受け壊滅状態に陥った

僕の父親…《如月》現会長も警備が手薄になった一瞬をつかれ、一時危篤状態まで陥ったようだがどうにか命は取り留め、以前のような絶対的カリスマ性は幾分ナリを潜めたものの、自身も大ケガを負いながらも《十六夜》への反撃を画策しその手腕を見せつけた松永を若頭に据え、今も《関東一大勢力》の名を欲しいままにしていた

《無双組》は、壊滅状態にあった《十六夜》が当時圧倒的支持力を持つ若手のＮｏ．３をそのアタマに据え台頭してきた新興勢力だった

《無双》…自分達は無二だと名を掲げている辺り、胡散臭さは否めない…
｢武闘派｣｢頭脳派｣を使い分け、あっという間に関西でも一二を争う勢力分布を手にしてきた様だった

《十六夜》が断念せざるを得なかった関東進出の野望、そして壊滅させられた恨みを果たしてみせると、今の《無双組》は躍起になってるらしかった

《如月》のテリトリーでも《無双組》と見られる集団との小競り合いが続いていた…最近は松永もその後始末にウンザリしているようだった、古参からは先手必勝で《無双組》に攻撃を仕掛けるべきと声が上がっているようだが、松永をは時期尚早だと言ってガンとしてその意見を聞き入れないらしい…

当たり前だ…

大掛かりにコトを起こせば、今度は《如月》が国家権力に潰される…ヤツらはソレを知っているから小競り合いにも干渉してこないのだ、松永にはそのシナリオの一部始終が見えているようだった

それにより古参と松永の温度差は開く一方で、今は対立のカタチさえ見せてきていた

僕には、内部崩壊の可能性さえ出てきているように思えた

こんな中で跡目の僕と関わっていることが知られたら、《無双組》ばかりか《如月》内部からも何をされるか…油断できない状態が続いていた


仕事を終えマンションに戻ったのは、夜の１０時を回っていた

｢じゃ専務、お疲れ様です、また明日同じ時間に迎えに来ますね｣
｢うん、千賀頼む…｣

軽く手を挙げて中へ入ろうとした時、エントランス脇…何かに気付いた千賀が｢専務、あの人…｣と呼んできた

千賀の視線の先に目を向けると、ポツン…と頼りなげに立ち竦む一人の姿…

｢菜月？｣

驚いて声を掛けると、俯いていた顔を上げコッチを見てきた

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