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『ただいま、』
あれからすぐ帰ってきた。もう夜中だけど。
流石に皆寝ているだろうと思ってそっとドアを閉めた。
リビングの電気が付いている。
テレビの音がしている。
誰かが本をめくる音、ゲームの音、駒を動かす音。
いつも聞き慣れていた音が溢れている。
『夜中なのに、、?』
もうとっくに12時を回っている。
明日もきっと兄達は忙しい。なのに、
『なに、してるの、』
皆が居る、いつも通りの。
長男はラノベを読み、次男はスマホゲーム、三男はボードゲーム。
生まれてきてからずっと見ていた光景で、そして僕がしばらく見ていなかった光景。
今思えば毎日帰りが遅くなっても誰かしらが起きていたし、温かいご飯があった。
何故気付いていなかったのか。当たり前の事が当たり前になりすぎていた。
自身が当たり前から逸脱してしまっていたのに、もう戻れないと思っていたのに、"当たり前"をそう感じてしまっていたのだ。
「Aおかえり。遅かったじゃないか、ボードゲームする約束してたろ?」
「何言ってんだ三郎、Aは俺と遊ぶんだよ」
「はぁ?先に声掛けたのは僕だぞ??話聞いてなかったのか?」
「喧嘩すんな、お前ら、、、、Aおかえり。なんかあったのか?顔が暗いぞ。」
そう、この空気。雰囲気。
僕の家族。守りたかった、守られていた、家族。
小さな弱い僕を包み込んでいてくれたのはこの人達だ。他の誰でもない。
だからこそ守りたいと思ったのに、結局僕は1人じゃ何も解決できないのだ。
こうして家族や友人に支えられていなければ歩くことはおろか立っていることも出来ないのだろう。
1人で歩いていく力も必要、それは重々承知だ。しかし僕にはこんなに素晴らしい宝を持っている。一生捨てられない、手を離したって離れない宝物。
愛して愛して、焦がれてやまない宝物。
「A、気にしないで。深いことは考えなくていい。僕達が守るよ、大事な弟だもの。迷惑だって沢山掛けていいんだよ、支えあって成長していくのが僕らなんだから。兄弟ってそういうもんでしょ、」
「なぁにカッコつけた事言ってんだよ、こういうのは素直にわかりやすく言うんだよ。A、分かったか?甘えることも必要なんだよ。お前が何処に行ったって見つけ出せる兄貴が3人もいるんだ。いいか?お前は山田家の四男、それだけ分かってりゃいいんだ。」
「家族仲良く、手を繋いで離れないように、だな!A、大丈夫だからな。」
僕は馬鹿だ。
こんなにも温かかったのに。
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リエル(プロフ) - ううううううううう…終わってしまった… (2019年4月3日 23時) (レス) id: 4f0744403a (このIDを非表示/違反報告)
春斗(プロフ) - わあああ独歩とのおまけ有難う御座います好きですぅぅ…………兄弟もとい家族愛的な関係とてもよきですた……何かあった時に一郎達とは別に頼れるお兄さんで優しく見守っててくれる感じがとても微笑ましいというかもう尊い……有難う御座いました(*´ω`*) (2019年3月27日 2時) (レス) id: 8cfab7cc4c (このIDを非表示/違反報告)
黒猫(プロフ) - 既に投票済みです……だと……?! (2019年3月1日 16時) (レス) id: 77336b66d1 (このIDを非表示/違反報告)
春斗(プロフ) - それと、もし宜しければ独歩とのおまけもあの…是非……!!!!!!! (2019年3月1日 2時) (レス) id: 8cfab7cc4c (このIDを非表示/違反報告)
春斗(プロフ) - コメント失礼致します。ドシリアスな中にちょいちょい挟まれるギャグがとても良い味を出してて、あの、全体的に好きです。(語彙力)取り敢えず四男君をずっとあれしてた男はウサポリ公にガチでしょっぴかれてたら良いなって思いました。 (2019年3月1日 2時) (レス) id: 8cfab7cc4c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:須臾 | 作成日時:2018年12月5日 22時