月下美人の君.2

堅忍果決 ページ9

A「じい様っ！」

楊端和との面会も無事に終わり、別室に通された所に、そこには小さい子供から老人まで、数十人単位で人が集められていた。
ーそれは皆、A一族の者たちだった。


Aを見るや否や、「…姫様！」「生きておいでて…」「なんと宝様とお母君に似て、美しく成長されましたな…」と、皆が泣き崩れた。

A「…皆が、生きていたなんて夢見たい。」

祖父や周りの者と、泣きながら抱きしめ合い、久しぶりの再開を喜んだ。


そんなAの姿を、邪魔しないようにと静かに見守りつつ、席を外す蒙恬と王賁。


✴


蒙恬 「…なんかすごい所来ちゃったね…
しかも山の王が女の人だなんて、俺びっくりしちゃった。」


王賁 「この先どうするか考えているのか？」

蒙恬 「まったく…」

王賁 「おい…怒」


蒙恬 「このまま一族と山の民として一緒に暮らすか、王騎将軍の元へ戻るか……Aが決めることだ」

王賁 「本気で言っているのか。
……俺は奪ってでも、あいつを離す気はない」


王賁の答えに少なからず、驚く蒙恬。
自分もそれくらいハッキリ答えが出せればいいのに…。
もちろんAの事は、何よりも大切で大事にしたい。でも、だからこそ彼女が決めた道を自分が奪ってしまうのが、Aの幸せなのか考えてしまう。


王賁 「どっちみち、明日の朝下山する。
…それまで間に、後悔しない選択をしろ」

そう言って王賁は何処か行ってしまった。
取り残された自分は、胸にポッカリと穴が開いたみたいだった。


蒙恬 「…(A、お前を失うなんて…考えられない)」

ギュッと握る手に力が入る。

いつの間にか、こんなにも彼女が自分の中に存在していたなんて。
今まで色んな女の子と遊んできたけど、こんなに胸が苦しくて、忘れられなくて、失いたくないって思う子は一人も居なかった。

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