月下美人の君.2

GREEN.2 ページ50

前奏が流れ、幕が開いていく。
日ごろAの舞を見ている王騎軍の兵士達は、待ってました！と言いたげに、大袈裟なほど歓声や拍手を送るのだった。


曲が流れ、数名の踊り子達が出て舞い踊る。
その衣装も、咸陽では中々見ないものばかりだったので、男達の目を楽しませた。皆、大きな扇子を持ち華やかに舞う。曲の中盤なり、踊り子達がその扇子を中央に集める。

すると、その色鮮やかな扇子達の中から、
美しく着飾ったAが登場した。


観客「「「おおおおおおー！！！」」」
男達の熱気の声が大きく響く。


咸陽の踊り子達がよく着る服装で、宝石達が散りばめられた髪型を揺らし、Aの美しい歌声が響く。その姿に、見ているものは心奪われた。


歌うのは、恋歌…。
少しでも廉頗の慰めになってほしい…と願い、
彼に向かって歌いかける。


曲が盛り上がりを見せる中、再度扇子が中央に集められたかと思うと、今度はAの衣装が真紅のものへと変わっていた。背中と腕が見え、スリットから白い足が覗かせる。しかも髪飾りや髪型も一瞬で変わったことから、見るものは目を見開いて驚いた。



男達に持ち上げられ、より一層高いところから美しい歌声が響く。彼女自身も踊り子達と同じ扇子を持ち、歌いながら上手に魅了した。


揺れ動く度に、彼女の白い体が目に入り、キラキラとした宝石達がそれを彩る。目が釘付けになっている兵士達は皆、顔が赤くなっていた。


曲も歌い終わり、担ぎ上げられていたAも地面に降りて、お辞儀をする。


ーーこのような舞台、見たことがない。
演奏が止まっても、胸の奥の熱が醒めることはなかった。人々を魅了するまさに天才…だと廉頗は感じていた。歌い手としてならまさに中華一といっても過言ではない。


割れんばかりの拍手や声援、立ち上がる男達。
今までの敵味方となっていた兵士達が、Aの歌声で心奪われ、一致団結したように舞台に歓喜を送っている。


ーーーここまで生きていて良かった。
戦が生き甲斐で生きてきた廉頗だったが、自然と目からは涙が流れていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
GREEN：イメージソング

『月下美人の君.3』に続きます。
http://uranai.nosv.org/u.php/novel/kanon917/

この小説の続きへ→←GREEN

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す