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化学の先生の授業が分かりにくいとか、新しく出来た話題の遊園地に行ってみたいとか、悠真くんが尊敬している有里さんのこととか。そんな他愛もない話で盛り上がりながら見慣れた道を歩いて行く。結構前から悠真くんと一緒に帰ることは多かったのだが、私に歩幅を合わせてくれているということに気づいたのはここ最近のことだ。他にも話すときはちゃんと目線を合わせてくれたり、荷物が多い日は自然な動作で荷物を持ってくれたり。そんな細やかな気遣いと優しさがうれしくて、どうしようもなく好きの気持ちが波紋のように広がっていく。
こんなに優しくされちゃったら女の子はすぐ好きになっちゃうよ、悠真くんのこと。顔も可愛らしいし、笑顔だってアイドルであるがっくんと同じくらいに素敵だし。気さくでフレンドリーで、悠真くんを好きにならない子は見る目が無いと心底思う。恐らく身内と恋愛フィルターの影響もあるだろうけど。
問題なのは、寄ってくる女の子を拒まずにみんな受け入れちゃうところくらいだろうか。女の子数人と同時にデートしたって話を聞いた時は流石の私もちょっぴり引いてしまった。そのことに了承して悠真くんとデートする女の子たちにも少なからず問題はあると思うけども。
──── まぁ、私も悠真くんに惚れてる時点で女の子たちと同じなんだけどね。
帰り道だけでも、二人で居られることに優越感を抱いてるんだもん。こんな自分に呆れてしまいながらもちらりと隣を歩く悠真くんへ視線を向ければ、パチリと交わった。彼は私の内心なんて知らぬまま、ふわりと優しげに笑った。
「 あ、そうだ！ Aちゃん、このあと時間あるならあそこのカフェに寄って行かない？ 」
「 うん、いいよ。なにか新作メニューでも出たの？ 」
「 そうそう！ あのカフェの新作のチョコレートケーキが美味しいって評判なんだ〜！ だからAちゃんと一緒に食べたいなって思って 」
Aちゃん、チョコレート好きって言ってたもんね！
「 ……おぼえてて、くれたの？ 」
「 当たり前じゃん、僕の頭の出来は完璧だからね！ 」
上手にウインクをした悠真くんは私の手を取ると、鼻歌を歌いながら上機嫌でカフェへと向かっていく。うれしい、その感情だけが頭と胸をいっぱいにして、思わず頬が緩んでしまう。一方的に繋がれた手をそっと握り返し、ほわほわと夢見心地の中、悠真くんに置いていかれないように歩くスピードを早めた。
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