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「…なんか飲む?」

「ううん、大丈夫。長居はしないから」




核心には触れず尋ねてくる悟くんにはっきりと返すと、視線は合わせていないのに気配で驚いた様子が分かる



「色々滅入ることがあって…少しだけ顔が見たかっただけなの」

「何かあったの?」

「ふふふ…大丈夫、もう一段落着いたから。…もう一段落はこれから」


そう返すと悟くんは不思議そうに首を傾げた






「もうお別れしよう、悟くん」






俯いていた視線を上げ目を合わせて静かに言うと空間がシンとした





「な…、にを…」



絞り出したかのような悟くんの声に胸がきゅっと軋む




他の女性に心を割いていたからといって無碍に扱われたことはない

世間の常識とは違うかもしれないが

確かに、愛してくれていたのだ




大好きで
大好きで



いつかいなくなってしまいそうで怖かった

怪我をしないか心配だった

少しでも役に立ちたかった

悟くんの拠り所になりたかった



だから私だけを愛してくれなくても…良かった


そう思ってた





思って…たのに




ただ、私が気付いてしまったのだ







私は、



ずっと寂しかった






お母さん、私も…寂しかったよ






母が私に伝えたかったのはこのことだったのだと知った


こんなに満たされているのに、その分虚しさが消えてくれない



一度気付いたこの気持ちを無視し続けることは出来なかった





「ごめんね…悟くん」

「なんでいきなり…っ、浮気したのは何度でも謝る!!…だから!!!」

「違う!」

「!」


どちらかと言うと普段物静かな私の大声に悟くんは驚く



「違う、の……全部知ってた…ただ私は狡くて、見てみない振りしてただけ」

「山田太一…?」

「なんだかんだ面倒見が良いところも、変に照れ屋なところも、いっぱい背負ってるのに飄々としていられる強さも、実は生徒のことを真剣に考えてる優しさも、他人のために本当に怒れるつよさも……私に向けてくれる優しい顔も、だいすきだった」

「…」

「他に何もいらないと思ってた…っ」




本当はこんな汚い自分に気が付きたくなかった




「全部欲しいって…思った…!」



なんという欲深か



醜く歪んでいるであろう自分の顔と溢れ落ちそうな涙を見られないようにと両手で顔を覆った


きちんと綺麗にお別れをするつもりだったのに

なんて情けないのだろう

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- わー!めっちゃすきです! (2021年3月13日 19時) (レス) id: c890e5f159 (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - 舳さん» 嬉しいっ!!ありがとうございます!(´▽`) (2021年2月25日 19時) (レス) id: 9c488eb26d (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - しんどい…語彙力失いましたとても好きですありがとうございますヽ(;▽;) (2021年2月24日 19時) (レス) id: 1f83f3c66d (このIDを非表示/違反報告)
神無月(プロフ) - かのんさん» かのんさんの欲望の塊を楽しみにしてます((( ・`ω・´)キリッ (2021年2月21日 15時) (レス) id: 27e0c87bdc (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - 神無月さん» コメントありがとうございます!これからも欲望のまま書きなぐります!(o≧▽゜)o (2021年2月21日 15時) (レス) id: 9c488eb26d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かのん | 作成日時:2021年2月17日 8時

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