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「…もしもし」
その日は雨だった
何だか嫌な予感がして夜も寝付けず
朝も憂鬱な気分のまま出勤した
『ーーーーーーー』
「…、分かりました、直ぐに向かいます」
電話先の相手にどのくらいで着くのか大まかな時間を伝え通話を終了し、今度は隣に座っている伊地知くんに声を掛け事情を説明すると二度返事で了承してくれた
今日は書類仕事のみで急ぎの用がなかったことが幸いだ
着たばかりで広げていた用具を再び手早く仕舞い車に飛び乗った
急いではいるが、覚悟していたことなのでそこまで心乱されてはいない
目的の病院に着くとナースステーションで看護師さんに声を掛けて部屋に案内され、看護師さんは静かに部屋を立ち去った
「……お母さん…」
声を掛けると窪んだ瞳がゆっくりと開いた
「き、て…くれた…？」
「うん…来たよ。苦しい…？」
「すこし、ね」
長い闘病生活で痩せ細った身体は元気だった時のそれとは似ても似つかない
酸素マスクでくぐもった声は弱々しさをより助長させていた
「ごめんね…ひとりに、しちゃう」
「ううん、いいの…」
ベッドサイドに置かれた丸椅子に座り、母の骨張った手を両手で握りしめる
「心配ばかり掛けて…親不孝な子供でごめんなさい」
言うと母は力なく笑った
「こどもの心配をするのは、親の特権よ…ただ…あなたが家庭をもって、幸せになるのを見れない、のは…悲しいな…」
「……、うん」
「あなたがいて、幸せだった…でも…」
母の目尻から一筋涙が溢れたのを見て私は目を見開いた
「さみしかった…、」
「……っ」
「幸せなはずなのに…さみしかったから…、山田太一は同じにならないで…」
初めて聞く母の弱音に心が斬り付けられる
自分は母に目一杯の愛情を与えて育てられた
だが、母はずっと寂しかったのだ
自分だけでは埋めてあげられなかった情けなさと苦しさで頭の中がグチャグチャになる
「あなたは、あなたを慈しんで、あいしてくれる人と…一緒にになって、ほしい…」
「…ごめんなさい…っ」
やはり母は分かっていたのだ
私の愛している人は、私だけを愛してくれる人ではないということを
独り善がりな恋をしていることを
知っていて尚、見守ってくれていた
それは簡単なようでとても難しいことで
「…うん、うん…ちゃんとするよ、お母さんが安心できるように」
そう言うと母は最期に安心した様に笑った
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√ - わー！めっちゃすきです！ (2021年3月13日 19時) (
レス) id: c890e5f159 (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - 舳さん» 嬉しいっ！！ありがとうございます！(´▽｀) (2021年2月25日 19時) (レス) id: 9c488eb26d (このIDを非表示/違反報告)
舳(プロフ) - しんどい…語彙力失いましたとても好きですありがとうございますヽ(；▽；) (2021年2月24日 19時) (レス) id: 1f83f3c66d (このIDを非表示/違反報告)
神無月(プロフ) - かのんさん» かのんさんの欲望の塊を楽しみにしてます((( ･`ω･´)ｷﾘｯ (2021年2月21日 15時) (レス) id: 27e0c87bdc (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - 神無月さん» コメントありがとうございます！これからも欲望のまま書きなぐります！(o≧▽゜)o (2021年2月21日 15時) (レス) id: 9c488eb26d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かのん | 作成日時：2021年2月17日 8時
