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「び、っくりした…、どうしたの?」


両手で胸元を抑え驚いたことでいつもより早く脈打つ鼓動を収めようとする

悟は私の問い掛けを意に返ず半端に開かれた私の自室のドアの向こうを視界に入れていた


大きい物はまだであるが、棚などに置かれた小物や本は殆んど片付け終わって物悲しくなっている

無理をすれば殆んどの作業は今日中に終わりそうだ


部屋全体に視線を巡らせた悟はある一ヶ所を目に止めそれに向かって歩を進めた



「ぁ…、」


何に向かっているのか気付いた私はハッとし小さな声を漏らす





「一年以上も子供が出来ないからおかしいと思ってたよ」

「……」



悟の手には毎日就寝前に欠かさず飲んでいるピルが握られていた
飲み忘れないようにと先程机に用意しておいたのは失敗だった

…そもそも悟が自室に入ってくること自体想定していないが



「知ってたんだね…僕が瑞季のこと好きなこと」

「…うん」

「いつから?」

「……」


『いつ』
そう言われて言葉に詰まった

そんなの最初からだ


「正直に」


当たり障りなくどう答えようか考えていると、見越した悟がピシャリと言った



「……多分最初から。確信したのは付き合って2ヶ月後」

「2ヶ月後?」


何があったかな、と心当たりがなさそうな悟

それはそうだろう
私との初めてなんて覚えているわけがない


ましてや行為中も、行為後に眠っている最中も無意識に姉の名前を呼んでいたことなんて



昨日までは小さな事で締め付けられていた胸が今は麻痺したように穏やかだった

何の苦しさも感じていない自分の変化が、不思議と今まで生きてきた人生で初めて…ほんの少しだけ誇らしかった



「うん…あの、もういいかな…?悟も早く出なくていいの?」

「……」


悟はピルケースを持ったまま俯いて黙り込んでしまった

どうしよう…、と考えた末に取り敢えずこの間に今後の事について話しておこうと口を開く


「今日目星の引っ越し先をいくつかピックアップしたから明日にでも斡旋業者まで足を運ぼうと思ってるの。即日入居出来るかを優先して探したから数日以内には移れると思う…それまでに悟が前に頼んでたハウスキーパーの人が来れるように手配しておくね?…日数は前と」


同じでいい?とまるで業務連絡の様に続ける筈だった言葉は、悟の手にしているピルがボッという効果音とともに灰すら残さず燃え尽きた事で呑み込まざるを得なくなった

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ksbgtenmushi(プロフ) - すごく好きな作品でいつも続き楽しみにしてます!!是非続編のパスワード教えていただきたいです(o^^o) (2021年5月1日 1時) (レス) id: e9d7731bcb (このIDを非表示/違反報告)
あずき(プロフ) - いつも楽しく拝見させて頂いてます!!続編のパスワードを教えて頂きたいです。 (2021年4月27日 22時) (レス) id: 1f3621aec0 (このIDを非表示/違反報告)
雪椿(プロフ) - いつも楽しみにしています。続編のパスワードが解けるその日を心待ちにしてます(*^^*)応援してます! (2021年4月26日 22時) (レス) id: e95a52c7d4 (このIDを非表示/違反報告)
noenatsu(プロフ) - 続きがきになります!パスワードを教えて頂きたいです! (2021年4月26日 22時) (レス) id: a7d2cd1144 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 続編も楽しみにしていました! パスワードを教えていただけないでしょうか? (2021年4月26日 20時) (レス) id: 947d5e398f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かのん | 作成日時:2021年2月26日 0時

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