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まっすぐに絡まった視線に、時間がゆっくりに感じる。
「今日絶対言おうって決めててん」
笑ってない、少し切ないような顔ののんちゃん。
「ずっと、いつ言おうか迷ってたんやけど、なかなかタイミングなくて、今日しかないなって」
「……」
「…良かった」
ふ、と空気を白く染めたのんちゃんに口元のマフラーをクイっと下げられる。
反対の手がふわっと頬に触れ、少し冷たさを感じた。
のんちゃんの親指がするんと頬を撫でる。
何度も指が頬の上を滑り、その右手がさっきみたいに髪の毛をもう一度耳に掛け直した。
左手はとん、と肩に乗る。
ゆっくりと背中を丸めて近づくのんちゃんの顔に、震える瞼を下げるのが精一杯。
視界が暗くなったとき、チュ、という小さな音とともに温かい何かが触れたようなその感触は、こめかみに残った。
目を開けると、ゆったりと瞬きをするのんちゃん。
こめかみにキスなんて、どうしたらいいのかわからずにいたら、もう一度のんちゃんの目が私の視線を奪う。
息を吐くように、少し照れたようなのんちゃんが小さく笑った。
すると肩にあった手が離れたと思ったら、両手で包むように頬と首のあいだを持たれて、そおっと少し顔を上げられる。
一瞬。時間にしたら1秒にも満たないくらい。
触れた唇がこんなに柔らかいなんて知らなくて、初めての感覚にまた大きな鼓動が夜に鳴り響く。
ぽん、と肩に下りてきた両手から、クスクスと笑うのんちゃんの振動が伝わってくる。
のんちゃんと、キスをした。
堪えていたはずの涙が、ぽろんと零れ落ちた。
慌てて手で拭うと、「悲しい?」なんて少し意地悪な顔でのんちゃんが笑って、首を横に振る。
んふ、と笑ったのんちゃんの手が頭の後ろの髪をさらさらと撫でる。
ゆっくりと往復する手に胸のあたりがじわじわと熱くなる代わりに、涙は止まった。
夢ならどうか覚めないで。
そんなことを半分本気で願う。
舞い降りた一片の奇跡が聖なる夜に消えてしまいませんように。
ほんの少しの恐怖を連れた心はのんちゃんの目尻が伸びた柔らかい目に、少しずつ、甘く、溶かされていく。
「寒ない?」
「…ちょっと」
本当は気温のことなんて考える余裕はないけど。
そこは隠して返事をすれば、今度は前からゆっくりと私を腕に閉じ込めたのんちゃん。
「あったか」
ぽつりと聞こえた言葉。
幸せなのにどこか苦しくて、胸はきゅうっと痛くなる。
冬があったかいなんてこと、生まれて初めて知った。
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りぃな - 最近花音さんの作品に出会い、いくつか読ませて頂きました。どれも時間を忘れて読み進めてしまうほど面白く、大好きです。制服黒髪小瀧くん、サイコーでした!まっすぐな重岡くんもすごくいい奴で、一年分のキュンキュンを味わった気がします 笑 (2020年10月9日 22時) (レス) id: 6d972d4f2d (このIDを非表示/違反報告)
らっく。(プロフ) - もう完結してしばらく経ってしまっているので今さらのコメントです…。花音さんの作品、他にもいくつか読ませて頂きましたが、どの作品も描写が丁寧に書かれていて目の前に起こっている出来事のように思えます。「関野のおかげで楽しかった」のコメント狡いな〜っ (2018年11月29日 2時) (レス) id: 2be3d0728d (このIDを非表示/違反報告)
花音(プロフ) - まろんさん» 読みながら絵が浮かぶものを書けたらいいなと思っていたので、入り込んでくださったなんてすごく嬉しいです。素敵な感想ありがとうございました。これからも楽しんでいただけるようなものを書けるよう頑張ります。 (2017年6月4日 19時) (レス) id: 819da26d91 (このIDを非表示/違反報告)
まろん - 凄く文字が丁寧で読んでいてスっと入り込めたストーリーでした。私より年下の方がこんなにもいい小説を書いたのだと素晴らしいなって。主人公になって読んでみて入り込み過ぎてしまいました。これからも次回作楽しみにしております (2017年5月13日 15時) (レス) id: c7f87c9170 (このIDを非表示/違反報告)
花音(プロフ) - ちかさん» ありがとうございます。学生だからこそ、というような時間を楽しんでいただけたならなによりです。ファンだなんてもったいないお言葉をありがとうございます。彼の番外編は書くつもりなので、またお会いできたら嬉しいです! (2017年4月29日 16時) (レス) id: 819da26d91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花音 | 作成日時:2017年3月27日 22時