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「はい」
とん、とアルバムを閉じて、差し出すシゲ。
「ありがとう」
そっと開くと、すぐにシゲのメッセージが目に入った。
『今までありがとう。
関野のおかげで楽しかった。 しげおか』
少しだけ熱くなった目頭。
シゲを盗み見ると、黒板に落書きする山本くん達を見て笑っていた。
「シゲ俺のも」
後ろから聞こえた声に振り返れば、やってきたのんちゃんが隣の机に腰掛ける。
「あーしまったとこやのにー」
そう言ってもう一度よいしょ、と床から膝に乗せたリュックからアルバムを出したシゲが「書いて」とのんちゃんに渡す。
「はいのんちゃん」
シゲののんちゃん呼びを「はいどーも」とスルーして、寄せ書きを書き込んだアルバムを交換する二人。
「字汚な」とのんちゃんが小さく笑った。
「うるせえ、これでも綺麗に書いた方や!」
「重症やな」
くははっ、と笑い、「じゃあね」と席を立ったシゲに手を振る。
「これシゲからの?」
シゲがいなくなってからも、なんとなく二人とも椅子に座ったままでいたら、机の上の東京ばな奈を指差したのんちゃん。
「うん、のんちゃんももらった?」
「みんなで部活顔出したときに」
「なるほど」
「帰る?」
のんちゃんの問に頷きながら、荷物を持って立ち上がる。
制服を着て二人で電車に乗るのも今日と明日で終わりなんだって、実感は一つもないけれど、四月になれば私達は大学生になる。
行きと同じように、のんちゃんの腰に腕を回す。
朝よりも気温は上がっていて、春が顔を覗かせる。
マンションの前のコンビニで自転車を停めたのんちゃんが、「寄ろ」と振り返って言った。
二人で紙パックのジュースを買い、自転車を押すのんちゃんの横を歩いて、公園のベンチに腰を下ろす。
ストローを咥えて、なんでもない話をした。
「神ちゃんの写真見た?文化祭のダンス部の」
「見てへん」
「やばいで、意味わからんほどかっこよかった」
のんちゃんがアルバムを取り出して二人の間に広げ、ベンチに跨るように座り直した。
「これこれ」
「わ、ほんまや。すごい」
「な」
そのままページをめくれば、教室で授業を受けている私達のクラスの写真が出てきた。
みんなが同じ方向を見て楽しそうに笑っていて、いつのなんの授業だろう、なんて考える。
朝練をやっていた運動部がこぞってジャージ姿で、席も出席番号順だから、春の進級したばかりの頃の写真かもしれない。
「なんか、もう懐かしいね」
「ほんまな、まだギリギリ卒業してへんのに」
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りぃな - 最近花音さんの作品に出会い、いくつか読ませて頂きました。どれも時間を忘れて読み進めてしまうほど面白く、大好きです。制服黒髪小瀧くん、サイコーでした!まっすぐな重岡くんもすごくいい奴で、一年分のキュンキュンを味わった気がします 笑 (2020年10月9日 22時) (レス) id: 6d972d4f2d (このIDを非表示/違反報告)
らっく。(プロフ) - もう完結してしばらく経ってしまっているので今さらのコメントです…。花音さんの作品、他にもいくつか読ませて頂きましたが、どの作品も描写が丁寧に書かれていて目の前に起こっている出来事のように思えます。「関野のおかげで楽しかった」のコメント狡いな〜っ (2018年11月29日 2時) (レス) id: 2be3d0728d (このIDを非表示/違反報告)
花音(プロフ) - まろんさん» 読みながら絵が浮かぶものを書けたらいいなと思っていたので、入り込んでくださったなんてすごく嬉しいです。素敵な感想ありがとうございました。これからも楽しんでいただけるようなものを書けるよう頑張ります。 (2017年6月4日 19時) (レス) id: 819da26d91 (このIDを非表示/違反報告)
まろん - 凄く文字が丁寧で読んでいてスっと入り込めたストーリーでした。私より年下の方がこんなにもいい小説を書いたのだと素晴らしいなって。主人公になって読んでみて入り込み過ぎてしまいました。これからも次回作楽しみにしております (2017年5月13日 15時) (レス) id: c7f87c9170 (このIDを非表示/違反報告)
花音(プロフ) - ちかさん» ありがとうございます。学生だからこそ、というような時間を楽しんでいただけたならなによりです。ファンだなんてもったいないお言葉をありがとうございます。彼の番外編は書くつもりなので、またお会いできたら嬉しいです! (2017年4月29日 16時) (レス) id: 819da26d91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花音 | 作成日時:2017年3月27日 22時