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映画館ってこんなに隣が近いんだということに、暗くなって初めて気がついた。
のんちゃんの空気をすぐそこに感じる。
予告映像を見て「俺これ観たい」と他の人に聞こえないくらいの小さな声でぼそっと言うだけで、とくん、と胸が鳴った。
本編が始まると、ときどきポップコーンを取ろうとした手が触れて、ストーリーに集中していても唐突に隣にのんちゃんがいることを思い出す。
そんなことを繰り返しているうちに、二時間はあっという間に過ぎて行った。
電気がつくと同時にのんちゃんがくーっと腕を伸ばす。
ちらっとのんちゃんを見れば、ぱちっと目が合った。
「行く？」
「うん」
面白かったね、なんて話をしながら映画館から出て、なんとなくブラブラする。
「あれ前に流星が着てた」なんてマネキンが着ているパーカーを差して教えてくれたり、お店の入り口のあたりにある服のタグを見ては、「たっか」なんて笑ったり。
いわゆるウィンドウショッピング。
ただ歩いているだけなのに、今日が終わってほしくないって、ひたすらに願ってた。
「そろそろ出よっか」
腕時計を見たのんちゃんが言った頃には、陽が落ちかけていた。
電車に乗って、二駅移動する。
車内はクリスマスに心躍らせる人達でギュウギュウってほどではないもののそこそこ混んでいて、向かいに立ってつり革を掴むのんちゃんが空けてくれたスペースに立ち、椅子の端の棒に掴まった。
ガタン、と電車が揺れた時に少し左によろけそうになって、「おお」とのんちゃんの手が軽く左肩に触れる。
「平気？」
少し笑いながら顔を見られ、コクコクと頷く。
のんちゃんがふふ、と笑って私の後ろにある電車のドアに視線を移した。
目的の駅で降りると想像以上にカップルが多くて、少し震える。
先に改札を抜けたのんちゃんが後ろを振り返って、「着きました！」なんてきゅっと目を細めて言った。
パチパチと拍手をすると、「よし行こ」とのんちゃんが人がたくさん流れて行く方を指差す。
「きれー！」
入った途端にそうこぼれるほどの景色。
全方向が輝く光で溢れかえっている。
のんちゃんもびっくりしたような少し真剣な顔で「めっちゃ綺麗やな」なんて呟いた。
「これ全部人がやったんやな」
「ハハ、現実的」
「でもすごない？」
「そうやね、労力が光ってる」
少しずつの細かい作業が積み重なってこの幻想的なほどの空間を作り出していると思ったら、不思議な感じがする。
「あっち行こ」
のんちゃんが綺麗な笑顔で言った。
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りぃな - 最近花音さんの作品に出会い、いくつか読ませて頂きました。どれも時間を忘れて読み進めてしまうほど面白く、大好きです。制服黒髪小瀧くん、サイコーでした！まっすぐな重岡くんもすごくいい奴で、一年分のキュンキュンを味わった気がします 笑 (2020年10月9日 22時) (
レス) id: 6d972d4f2d (このIDを非表示/違反報告)
らっく。(プロフ) - もう完結してしばらく経ってしまっているので今さらのコメントです…。花音さんの作品、他にもいくつか読ませて頂きましたが、どの作品も描写が丁寧に書かれていて目の前に起こっている出来事のように思えます。「関野のおかげで楽しかった」のコメント狡いな〜っ (2018年11月29日 2時) (レス) id: 2be3d0728d (このIDを非表示/違反報告)
花音(プロフ) - まろんさん» 読みながら絵が浮かぶものを書けたらいいなと思っていたので、入り込んでくださったなんてすごく嬉しいです。素敵な感想ありがとうございました。これからも楽しんでいただけるようなものを書けるよう頑張ります。 (2017年6月4日 19時) (レス) id: 819da26d91 (このIDを非表示/違反報告)
まろん - 凄く文字が丁寧で読んでいてスっと入り込めたストーリーでした。私より年下の方がこんなにもいい小説を書いたのだと素晴らしいなって。主人公になって読んでみて入り込み過ぎてしまいました。これからも次回作楽しみにしております (2017年5月13日 15時) (レス) id: c7f87c9170 (このIDを非表示/違反報告)
花音(プロフ) - ちかさん» ありがとうございます。学生だからこそ、というような時間を楽しんでいただけたならなによりです。ファンだなんてもったいないお言葉をありがとうございます。彼の番外編は書くつもりなので、またお会いできたら嬉しいです！ (2017年4月29日 16時) (レス) id: 819da26d91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花音
| 作成日時：2017年3月27日 22時
