132＊Yoshinori Side ページ39
＊
2人でタクシーを拾って乗り込む。
深夜ラジオの音だけが流れて、隣に座る横顔は、窓の外をボーッと見てる。
地方イベントで大阪に帰った時も、ファミレスの中に大吾しかおらんのを確認したのに、わざわざ俺と会わせるみたいにAちゃんを呼んできて、
なんで彼女と別れたんって聞いても、大吾は自分がフられたの一点張り。
今日もきっと俺とAちゃんが2人で話せるように、わざわざひとりでコンビニに行ったりして、
人の背中押して、自分を犠牲にして、めんどくさくて優しい男やんな。
そんな大吾が怒るのは決まって、俺がAちゃんを泣かせたとき…
「大吾」
そっと横顔の名前を呼ぶ。
「ん？」
大吾は窓の外を見たまま、返事する。
「俺、今でもやっぱり大切やなって思うねん。Aちゃんのこと」
Aちゃんの名前に、大吾の肩がピクリと震えた。
「うん。そう」
顔は平静を装ってるけど。
「でもな、大吾のことも大切や」
「なんなんいきなり」
大吾は窓の外から視線を外して、こっちを見た。
「Aちゃんとは運命やったって思ってたいし、今でもたまに手放したこと後悔すんねん」
大吾の唇がきゅっと締まって苦しそうな表情になったけど、最後の俺の見栄っ張りやから許せよ。
「でもたぶん、Aちゃんは前に進んでる」
たぶんどころかこの耳で、確かに聞いてしまった。
「俺は大吾にもAちゃんにもずっと笑っててほしい」
「正門…どうしたん…？」
「大吾がもしAちゃんのことまだ好きなら…」
大吾は困惑したような顔で首を傾げて、ぎゅっと拳を握りしめてる。
「俺に遠慮とかすんな」
ウィンカーの音とラジオの雑音だけが車内に響く。
「もし遠慮したら…せやな、インディーズ時代の正門の歌詞書いてたんはこの人ですって晒す」
「何言うてんの？恐ろしいこと言うのやめて」
きっとお互いに張り裂けそうな胸の内をしずめて、クスッと笑い合った。
「でも嘘やないよ。Aちゃんのこと笑わせたって。そんで、大吾も一緒に笑ってて」
社員寮前にタクシーが止まった。
「正門…」
苦しそうな大吾の表情にAちゃんが2人おればええのにってありもしないことを考えてしまった。
「じゃぁ、またなBFF」
大吾の肩をポンっと押す。
「恥ずかしいこと言うな、アホ」
大吾は千円札を数枚俺に押し付けると、既に開かれたドアから降りた。
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Bear(プロフ) - 最後に涙腺が崩壊しました。こんなに最高な作品にはしばらく会えなそうです (2021年12月14日 22時) (
レス) @page45 id: 3daf0f2645 (このIDを非表示/違反報告)
むたむた - どんでん返しに泣きました。夜通し読んじゃいました。ステキな作品をありがとうございます！！！ (2021年6月3日 4時) (レス) id: 738b505511 (このIDを非表示/違反報告)
林芽亜里 - 一気に完結まで読み尽してしました！！もう素晴らしすぎて(*´∇｀*)最初は、正門くんとハッピーエンドを迎えると思っていたけど、大吾くんと最終的に結ばれて、思ってもいない展開でビックリしました(^｡^)幸せな時間をありがとうございました(#^.^#) (2020年5月27日 22時) (レス) id: 9f77b0a91a (このIDを非表示/違反報告)
あおい(プロフ) - もう最高でした！！大好きなまさにしのお話ってだけでも嬉しかったのにこんな素敵なお話、もう最高すぎました！この作品の大ファンになりました！！楽しい時間をありがとう！また書く機会があったら楽しみにしてます！！ありがとうございました！！ (2020年4月26日 19時) (レス) id: db8a594314 (このIDを非表示/違反報告)
はつね(プロフ) - 初めは正門くんとエンド迎えるんかなって思ってたんですけど最後西畑くんと幸せになっててびっくりとよかったなって涙出ました！！ (2020年4月15日 23時) (レス) id: ee2a92e956 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：華音 | 作成日時：2019年5月16日 22時
