君へのSong (ページ35)

今日:4 hit、昨日:30 hit、合計:214,252 hit

35＊Daigo Side ページ35

＊

「キスってどんな時にするもんですか…」

週に一度だけ。
Aと同じ授業の終わり。

お昼時の騒がしいカフェテリアで真顔でそうきいてくるAに、

俺はカレールーとご飯を混ぜるスプーンを思わず止めた。

正門とキスしたん？って喉元まで出てきた言葉を一旦押し戻す。

「昨日、ちゃんと謝ってもらえた？」

Aの誕生日の夜、俺は深夜に正門に電話をかけて説教してしまった。

Aの家に行ったことはなんとなく伏せたけど。

「はい…。それはもういいんです…けど…」

いや、あんなに泣いてたやんけ。

「仲直りのチューでもされたん？」

何も気にしてないかのような声色を装う。

「仲直りなんかはわかんないんですけど…キスされました」

Aはランチセットに全く手をつけず、俺を見ている。

「にしては、嬉しくなさそうやん」

震えそうになる手でしっかりスプーンを握り直す。

「ってことは告白されたん？」

「それはなくて…好きって言いそうになっちゃったんですけど、言ったら壊れちゃいそうな気がして…」

ぽつりぽつりと昨日の出来事を話し出すAは、なんか顔色も悪い。

話を聞く限り、彩月さんも最もなこと言うてるけどなんとも言えん。

「でもキスされて嬉しかったんやろ」

「…はい」

パールが光るAの桃色の唇。

正門はキスしたんや。

黒いものがふつふつとわいてきて…カレーってこんなにまずかったっけ…

「わたしどうしたら…」

「知らん」

つい突き放すみたいな言い方になってしまって、はっと顔をあげると、

「すいません…甘えちゃってごめんなさい」

困惑したAの顔。

「いや…その…俺、恋愛相談とか、アドバイスできんし…」

それどころか現在進行形でこじらせてんのに。

「彩月さんのこととか誰にも言えないし、大吾さんならわかってくれるかなって…」

力なく笑うA。

「別に…きくだけならええけど…ていうかA、食べへんの？」

さっきからAはひとくちも食べてない。

「食欲…なくて」

「熱でもあんのちゃう？」

スプーンを置いてAの額に手をあてると

「あっつ！A、まじやん！はよ言えや」

「だって…」

「アホ！帰るぞ」

「でも今日バイト…」

「俺が代わりに入る」

「すいません…」

泣きそうな顔で俺を見上げるAは、こんな時やのにかわいくて、抱きしめそうになる衝動をこらえながら手をとってカフェテリアを出た。