君へのSong (ページ4)

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「はい、じゃぁおつかれさんでした」

深夜のコンビニの前で、正門さんの缶コーヒーと私のココアがコンと音を立てる。

つきあってるわけでもない。

手を握り合ったこともないし、

家に行ったこともない。

正門さんがストリートライブを始めた頃から応援してるってだけの、ただのファン。

だけど、ライブ終わりにはいつも正門さんの奢りで、コンビニ前かチェーンの喫茶店でお疲れ様って乾杯する。

この時間がとてつもなく大好き。

いつか好きですって言えたらなって思うけれど、あんなに素敵な歌詞と曲を紡ぎ出すこの人に、一体どんな言葉を選んで、なんて伝えたらいいんやろ…

「何考えてんの？」

「すいません！ぼーっとしてました！」

「お髭が生えてるで」

正門さんがわたしの口の周りを親指で拭う。

「それは正門さんの方ですー！」

手を伸ばして顎の下を触ると

「やめてやAちゃん、それは本物」

正門さんが大きく笑う。

「そろそろ送るわ」

正門さんは空になった2人の缶をゴミ箱に捨てると、バイクにまたがり、私にヘルメットを渡す。

「いつもありがとうございます」

正門さんの後ろ。

私の特等席。

「スカート絡まらんようにな」

正門さんはいつも同じ心配をする。

「はーい！」

私はお気に入りのふわふわのロングスカートを整えて、正門さんの腰に手を回す。

夜の風は冷たくても、私の心はぽっかぽか…なんて

陳腐な歌詞が浮かんでしまうくらいこの時間が幸せ。

下宿先まで永遠につかなきゃいいのにって願いながら、きいたばかりの新曲を口ずさんだ。