君へのSong (ページ29)

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29＊Daigo Side ページ29

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ロングのバイトを終えて、ひとりの夜道を自転車でこぐ。

今頃、Aと正門と何してんねやろ…って今日1日で何回もそればっかり考えた。

家に誘うやなんて、正門も意外とやり手やんか…

このまま2人くっつくんやろうか…

なんて考えているとふらふら歩く見覚えのある後ろ姿が見えて、ブレーキをかける。

「…A？こんなとこで何してんの？」

暗闇の中、Aがひとりで歩いていた。

「大吾さん…」

消え入りそうな声で俺を見上げるA。

「いや正門は？」

「正門さん、仕事で来られなくなっちゃった…らしく…って…」

絞り出した言葉は涙声に染まってる。

「待ち合わせ、18時って言うてなかった？今もう22時…」

「もしかしたら終わるかもって思ってちょっと待ってたんですけど…へへっ…もう帰るんで…」

「………」

なんで。

なんでやねん。

「あの野郎。ひとこと言ったる」

俺は思わずスマホを取り出した。

「いいんです。迷惑かけたくないから」

「よくないやろ。A、あんなに…楽しみにしとったやん…」

なんで俺がこんなこと言わなあかんねん。

「うぅっ…大吾さんっ」

堪えていた何かがとれたみたいにAは泣き出した。

「ちょっと…A…」

俺は慌てて自転車を止めて、ハンカチを取り出した。

Aは子供みたいに泣いていた。

あやすように撫でた背中は冷え切ってて、

思わず腕の中に引き寄せると、

Aはぎゅっと握りしめた俺のハンカチを目にあてたまま、体を震わせていた。