夜殺し【古森元也】 (ページ10)

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10.殺ページ10

ついに、殺される。そう身構えた時、彼は予想外の言葉を放った。

「…俺が夜野さんの光になる」

「な、ななな、何すかしたこと言ってるの、」

「自分で言ってて恥ずかしいよ。だけど夜野さんを殺すには、これしか思いつかなかった。」

まっすぐと私の目を見つめるから、逸らすに逸らせなくて熱を持った顔で見つめ返す。彼も顔が赤い。周りは真っ暗なのに、しっかりと視界で確認できるほど真っ赤だ。

「…古森くんが、私を照らしてくれるの？」

「うん」

「どこにいても見つけてくれる？」

「もちろん。」

「殺して、くれるの」

「お望みなら。」

今日はダメだ、気持ちを振り回されてばかり。
ファミレスで押さえ込んだ涙の分も合わせて、大量のしょっぱい雫が止まることを知らずに溢れだしてきた。

あの時殺してと頼んだ私は、とっくのとうに彼の事が気になる存在だったのかもしれない。そうじゃないと、彼に殺害依頼なんてしない。
そして、彼に希望を見出していたのかもしれない、私の光になってくれるんじゃないかって勝手に期待していたのかもしれない。

「あ、ほんとに殺すのはやだよ。」

あはは、と笑う彼の笑顔はやっぱり綺麗で、輝いている。
私にとって世界一の光だ、誰も否定することは出来ない、否定されてもそれを否定し返してやる。それくらい、いつの間にか彼が必要な存在になっていた。

「じゃあ、君の光で、私を殺し続けてね」

「任せといて！」

「ふふ、やっぱ物騒」

この気持ちをなんと形容したらいいのか分からない。これが恋というものなのか、それとも単なる依存か。ちょん、と触れ合った手を自然と取られて、優しく包み込まれた。

「ほら、もう泣き止んで」

「古森くんのせい」

空いた手で涙を拭く。目、腫れちゃうよなんて心配する彼はやっぱり優しい。

ふと上を見上げた時見えた空にはたくさんの星が輝いていた。

私もあの星のどれかにはなれたかな。どれもこれも、古森くんのおかげだけれど。

私は今日、人生で1番明るい夜を過ごした。