____…第5話…____ ページ5
いつもり、少し明るい夜。
電気は付けず、窓から差し込む月明かりだけを頼りに、読書をする。
真っ暗で静かな部屋。
近くにある、海のさざ波の音が聞こえる。
「うわー暗いなぁ。根暗っぽいぞー!PｰP!!」
急に扉が開き、電気を付けられた。
眩しくて、目を細める。
「いいじゃん…どうせ根暗だよ。」
「嘘つけ!!誰よりもプレイボーイなお前が!!」
開いていた本を閉じ、椅子から立ち上がった。
窓に手を付けて、真っ暗な海を眺めた。
「こんな遅い時間に、何の用?」
「『寝なさい!』って叱りに来た!!」
僕とは、少しイントネーションの違う言葉。
電気を付けているわけでもないし、騒いでいた覚えもない。僕が寝なくて、誰かに迷惑をかけただろうか。
「寝なきゃダメなの?」
海を眺めたまま聞くと、椅子に座った用な音がする。
彼は、「いや、別に?」と笑った。
しばらくの沈黙。あっちが先に口を開いた。
「……ハッカーくんから。あのヒラって人、『男で、成人してる』ってさ。」
ピクッと、窓の縁に添えていた手に、力が入った。
…男?
「…マジで?僕が見たときは、十代くらいの女の子に見えたけど。」
「俺もそう思ったんやけど、狂気王国の国王で、二十歳は越えてるって。」
嘘でしょ!?
てっきり、言動や身長から、ヒラと呼ばれる人は、高校生くらいの女かと思ってた。
彼は、テーブルの上で両手を組み、その上にあごを乗せた。
「………そろそろ。」
ゆっくりと呟き、ニッと吊り上げた口角は、不気味だった。
シルクハットの影で、目が見えない。
少し上を向いた彼の目には、十字架が映っていた。
「そろそろやねぇ……」
「……何が?」
なるべく微笑んで、彼に聞いた。
「もうすぐ、アイツらは仲間割れを始める。」
……なるほど。一瞬意味が分からなかったが、少し考えて理解した。
この人の言うことは、必ず当たる。本当に凄い予言者だと思う。
「あっ。あと、ハッカーくんから。なんやっけな……み、緑沢A?も、中々使えそうやってー。」
…多分、緑川Aのことだろう。
「分かった分かった。言いたい事は分かったから、出てってくれる?読書したいの。」
「んもー。冷たいなぁ。おやすみ!」
笑顔で手を振って、彼は部屋から出て言った。その笑顔は、とっても楽しそうで。
…無意識に、椅子の手すりを、強く握り締めた。
「………羨ましいなぁ。」
ラッキーアイテム
大きなカマ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 602人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あみ - 本編最高すぎてこちらも読ませていただきましたが、、、いや本当に神です以上！！(?)本当に好みというかなんというか。ヒ.ジ.キ.の小説で一番好きかもしれません。こ.ーす.け.をのけ者扱いにしているような小説が多いイメージがあったので。この小説が本当大好きです！ (2021年7月25日 14時) (
レス) id: 2c5fd51ba4 (このIDを非表示/違反報告)
みー - すごく、すごく良かったですっっっっっ...！(大号泣) (2019年11月22日 7時) (レス) id: 7c0d6b05b3 (このIDを非表示/違反報告)
かえで@utaitelove(プロフ) - もう最高です…！！感動したと思ったら次はキュンキュンしてほんと私の心臓どうしてくれるんですか！影葉さん最高です( ；∀；)他の作品も全部読ませて頂きましたがほんとに天才ですね！？これからも頑張ってください (2019年1月1日 21時) (レス) id: a0615ac09b (このIDを非表示/違反報告)
アンジ* - 今になってもずっと読んでます！狂った国の王子様、こーすけが出てきたシーンで大号泣してしまいました。番外編、ぜひ読みたいです！影葉さん、感動をありがとうございました！ (2018年8月20日 20時) (レス) id: a0d4f82c90 (このIDを非表示/違反報告)
夜猫 - ヒラ可愛い！死にそう！ (2018年2月3日 5時) (レス) id: c27b932811 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：影葉
| 作成日時：2015年12月5日 14時
