泡が五十一 ページ1
「黒幕は誰なのか、教えてくれる？」
凛とした声が、薄暗い牢獄に響いた。
発したのは、綺麗な黒髪の女。
容姿も声も、この闇の世界に似つかわしくないが、彼女の憂いた瞳が
「誰が云うか」
対して嗄れた声で抵抗するのは、鎖に身体の自由を奪われた一人の男。
顔や手足の彼方此方に古傷が目立ち、如何にも悪党の様な出で立ちをしていた。
「貴方しかいないじゃない。ほら、喋って。でないと、余計な事迄喋る事になるわよ」
「どう云う意味だ」
「こう云う意味」
女が、何か諦めた様に歌を歌う。
美しく奏でられた其れは、厳しい顔の悪党を緩和させていく。
歌は短く、プツリと切れた。
「さあ、貴方の番よ」
「はぁ？今のが何だってーー」
男が本気でわからないと云った表情を浮かべたーーが、突如驚きに顔を歪め、
「俺の雇い主は新興の闇金融で、俺は用心棒として雇われた。それでー」
男は自分の発言に顔を青ざめさせ、縋るような視線を女に向けたが、女は男をじっと見つめるだけだった。
「もう、良いよ」
彼女の声で、男の声が止む。
ほんの一時、静寂が訪れた。
「今のは、」
「知る必要は無い」
「な、何でだ」
其れにも女は答えず、歌を紡いだ。
男は驚きの表情を顔から消さぬまま、自らの手で頸を締め、やがて生き絶えた。
「ごめんね、謳わせちゃって」
女の呟きは誰にも聞こえない。
叩敲の音で彼女は死体から目を逸らし、どうぞと返事をした。
「A、終わったか？」
「うん、行こう」
そうして彼女は牢獄を後にした。
女の名前は海津A。
ポートマフィアの人魚姫。
歌で生物を操る異能者。
一人の友が死に絶えて、一人の友が姿を消して。
最後に残った人の友達。
彼は護衛と成り果てた。
そんな彼女のお話。
✂------キリトリ------
〜設定〜
・
＊能 力 ー 『人魚姫』・・・1.歌を歌う事によって生物を操る
2.他人に謳わせる
＊年 齢 ー 20歳
＊誕生日 ー ７月20日
＊身 長 ー 159cm
＊体 重 ー 49kg
＊血液型 ー AB型
＊好 き ー 歌、甘味、紅葉
＊嫌 い ー 鴎外
※異能力『人魚姫』はデンマークのハンス・クリスチャン・アンデルセン作の『
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作者名：京beスウィーツ | 作成日時：2017年9月24日 9時
