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物心ついた時には、なにも感じていなかった。
どうやらここは、親がいない子が住む施設のようで、それは、“可哀想なもの”、らしい。
いつも、かわいそう、って言われてた。
かわいいね、かわいそうね、どうしてこんな子が
同じ顔をした大きな人達は、私の瞳を、髪を、体を、表情を見て、これがお前に向けられるありったけの慈悲だ、と言わんばかりに私に“ヤサシイ”言葉を浴びせた。
でも、この施設のすごそうな人、後に、施設長だってわかったんだけど、その人は優しかった。
いつも私にふくをきせて、かみをとかして、可愛いねって笑ってくれた。
それが、私の幼少期の全てだった。
小学校に入ってから、私はさけられていた。
あのこはかみがしろいから
あのこはめがちゃいろだから
あのこはおやがいないから
あのこはかわいいから
みんなが、ひそひそ私をみてなにかを言っている。
そのいみを、私は知らない。
さけられることのいみも、私は知らない。
きっと、大人達から向けられたこうきのしせんにも、気づいてなかった。
きっと、それが悪いこともわかっていなかった。
中学生になった時、それはいじめになった。
いや、私がいじめと感じていなかったからいじめではなかったかもしれない。
たまに足を引っ掛けられたり、たまにノートが破れてたり。
聞こえてないふりをされたり、掃除を押し付けられたり。
髪を、ズタズタにされたり。
生まれてこの方切ったことのなかった髪を切られたとは、悲しいとは思わなかったが何か分からない郷愁のような感情が浮かんでいた気がする。
そして、帰った時。
施設長が、一番悲しんでいたことも覚えている。
辛かったね、怖かったね。
そう言って、撫でてくれる手のひらはとっても暖かくて、何故か、瞳から零れた。
それは、涙だったらしい。
私は人生で初めて、その日に泣いたのだ。
それを見た施設長は急いで手続きをし、転校させてくれるように頼んだ。
とても早いスピードで済んだそれは、もう9月からは他の学校に行くという内容だった。
施設長は、良かったね、楽しみだね、と言って私の髪を綺麗に肩くらいに切りそろえると、前髪も作ってくれた。
そっちの方がかわいいよ、そういった施設長の顔は優しくて、私もなんだかポカポカした。
そして、転校したその日。
私は初めて、施設長以外の人に優しくされることを知った。
今日の遭遇人物
鈴木園子
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ランデブー - 面白い展開になってきていつもニヤニヤしながら読んでますwww完結が気になりますが、無理せず更新頑張ってください! (2019年8月8日 13時) (レス) id: bbafcd59f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茜子 | 作成日時:2019年8月7日 22時