五灯 料理上手 ページ5
「ただいまー!」
「おかえりなさいレティ〜。ホルシアートさんも、いらっしゃい」
「すみません、お邪魔します」
彩り鮮やかなサラダを抱えて微笑むテレシアさん。レティと同じ金の髪が、腰の辺りでさらりと揺れる。
オールドローズ家、奥方。
「これ少しですがオートミールです。ミッドフォード社のだそうですよ」
「あらミッドフォードの!いつもありがとうございます〜。じゃあ、早速ポリッジにしちゃいましょうか!」
「ポリッジ!わたし母さまのポリッジ大好きよ!」
「ありがとう、レティ。お手伝い頼んだわよ〜」
「まかせて!」
「私もお手伝い致します」
○●○●○●○
昼夜お構い無しに気温が動くこのロンドン、ジャルドーレ通りの朝は大抵冷たい。
オールドローズ家のポリッジの美味しさの秘密であるハチミツは、それ故よく凍ってしまうのだ。
銀のスプーンでさくさくとハチミツを掬い、瓶に入れて湯煎する。かき混ぜて徐々に溶けるハチミツは橙色に揺らめいていて。
「(まるで、炎みたいだ)」
温めすぎるのは厳禁、とテレシアさんに言われたのはいつだったろうか。栄養価が下がるかららしいが…俺もよく律儀に覚えているものだな。
やはり料理は嫌いじゃない。
テレシアさんに色々教えてもらえることを、いつもありがたく思っている。彼女達は、横でオートミールの入った鍋をかき混ぜていた。
「スティーブンさんは…」
「生ゴミの袋を持ってまた行きました。ふふ、あの人ったらおっちょこちょいですよね〜」
でも、そんな所を彼女は愛しているのだろう。その笑顔からは、非難の色など見えはしない。
「さあ出来たわ〜!ハチミツをいれてくださるかしら?」
「はい」
「んーいいにおい!とってもおいしそう!ね、ホルス!」
「ええ…今日も美味しそうです。レティ嬢は母君がお料理上手で幸せですね」
「うん!」
「ふふ、さあ盛り付けましょうか。もうすぐ父さまが帰ってくるわよ〜」
「はーい!」
元気よく跳ねて返事するレティ。柔らかそうな金髪も仲良く跳ねる。
この齢六歳の笑顔を見ると、つられて微笑むのは必然のような気さえした。
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作者名:かんだちめ | 作成日時:2018年1月7日 17時