人生とは甘美である。Jun.M (ページ44)

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コンコンとドアが鳴る。

ウェイターが最後にデザートを持ってきてくれたので、それを食べてから風見さんが待つアストンマーティンへ戻った。

車内では何も話さなかった。

だけど私の左手は松本さんの右手に包まれていた。

私の家に着いた時松本さんは、
「こんなところに住んでるのか！？」と大層驚いていた。

それに対して何かを言い返す前に、私のスマホが奪われた。

返ってきたスマホには松本さんの連絡先が入っていた。

「今日はちゃんと寝ろよ、おやすみ」と
また軽く私の頬に触れ松本さんと風見さんが乗った車は出発した。

部屋に帰り、このオンボロアパートから出る、ぬるめのシャワーを浴びながら今日１日のことを思い出す。

とてつもなく長い１日のようだった。

そして松本さんに触れられた頬と手を、目を閉じてあの感触を思い出しながら自分の手で触れてみる。

シャワーが肌を押し付けるような感覚と合わさって、また全身に鳥肌が立つ。

そうして目を開けて写った鏡の中の私は。

……とんでもないほど、“女“の顔をしていた。