治くんの彼女。【HQ】 (ページ15)

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準々決勝当日。

試合前、治がスマホを手に取る。

治「...。」

A今日行くよ!頑張ってな!

待ち受けに表示された通知をスワイプした治がクラブバックの中にボスンとスマホを投げ入れた。

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2対0でストレート勝ちした稲荷崎が準決勝に駒を進める。

尾「侑絶好調やったなー！」

侑「俺を誰やおもてんねん！最強モードの侑さんやぞ！」

尾「調子乗んな。笑」

連続得点を何度も決めた侑が楽しそうに話す傍ら、クラブバックを肩にかけた治が角名に静かに近付いた。

治「俺先帰るわ」

角「この後のご飯行かないの？」

治「今回はパス。おつかれ」

角名が「わかった」と返すと、他の部員にバレないように治がこっそり帰った。

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︰

「治くん、お疲れ様！」

体育館から少し離れた人気のない場所。

にこりと笑うAが治に駆け寄った。

A「次準決勝やなあ、おめでとう」

治「ありがとう」

嬉しそうに笑うAの頭をそっと撫でた治が力なく笑った。

A「...どしたん？元気ない...？」

治「...」

Aが治に抱きつこうとすると、治がAの肩を持ってゆっくりと突き放した。

治「...ごめん。暫く二人で会うのやめよか」

A「...え？」

突き放した手をポケットに入れた治が俯いた。

治「ちょっと、限界来たかも」

A「あ...侑くんのこと...？」

呆然としたままAが尋ねると、治がクラブバックを肩に掛け直した。

治「まぁあいつが一番の原因やけど...。まあ俺自身の問題やしAが悪いとかそういうのじゃないから。」

Aが涙目になると、治がAの頭をぽんと撫でた。

治「あいつら来る前にはよ帰りや。じゃあおつかれ」

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︰

あれから１週間。

治とはまともに連絡は取れず、次の試合に集中するため写真部の活動も試合まで無くなった。

『俺自身の問題』についてグルグル考えながら洗濯物を畳むAが付いていたテレビに目を移した。

『先日行われた春高バレー準々決勝。見事準決勝に駒を進めた稲荷崎高校が明日、□△高校と対戦します。』

映し出される映像をじっとAが見つめる。

A「治くん...」

画面に一瞬映った治を見たAが小さく肩を落とした。