検索窓
今日:13 hit、昨日:0 hit、合計:61,344 hit

微笑んだ理由 ページ41

(……そういえば。)


イナと喋っていてふと、前世の自分には弟がいた事を思い出した。死ぬ前は兄と母の事しか考えていなかったが、私には大切な弟がいる……いや、いた。

弟も優秀で、美形だった。兄は母親似、私と弟は父親似なんだと思う。

弟は私にだけ心を開いていた。よく、泣きながら私に抱きついてきた。私の事を姉様と呼び、敬語で話していたけれど。すごく慕われていた。

涙で服が汚れたのに、自分が頼られている事への満足感からか、少し嬉しかった。

父親がいなくなった時、私は12歳、弟は10歳だった。

そして、最愛の夫を亡くした母は、私たちに八つ当たりするようになった。

私はなんとか耐えることができたが、弟は体力がなく、さらには学校でいじめにあうという精神的苦痛を受け、ついには……

鳴り響くパトカーや救急車のサイレン。

無造作に貼られた立ち入り禁止のテープ。

怯える周囲の大人達。

キャーキャー騒ぐ女子高生達の心無い声。
ははっ、写真を撮っている人なんかもいたっけな。

地面に染みた弟の血。何故か、とても綺麗だと思った。

それと……

弟の、安らかな微笑み。
私の前でだって、あそこまで優しく笑ったことはなかったのに。

ねぇ、どうしてなの?

どうして死ぬ前に笑えるの?

私なんて怖くて死にそうで、何かの圧力におしつぶされそうだったのに、なんで?

弟がいなくなったことにより、今まで弟が受けていた分も私が虐待を受けた。

唯一の心の支えは、執事、かな。

夜はよく、母には内緒でホットミルクをくれた。

あの味は忘れられない。あの温もりも。

気づいたら書類チェックが終わっていたり、包帯が巻かれていたりいたのは、執事の仕業だ。

私は、お嬢様の執事で、幸せでした……

これが、彼の最期の言葉だ。

確か、母親が私に包丁を投げてきて……それを庇って……死んだんだ。

その時彼は、まだ20歳くらいだった。

可哀想に。
異性を愛することも知らず、苦痛の中死んだんだ。
私を庇って。
私があの時母の部屋に行かなければ。
いや、そもそも私が生まれなければ。
でも、彼も最期は

微笑んでいたんだ。

ホットミルク→←愛してるよゲーム2(ちょっと甘い系)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 6.7/10 (71 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
64人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

うたプリ大好き?(プロフ) - 完結になっていますが、これで終わりなのでしょうか? (2021年6月29日 21時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - 分かります! 私もリムル様とディアブロ大好きです! 今後はディアブロもだしてみようと思います。 とても参考になりました。 そしてコメントありがとうございます! 今後もよろしくお願いします☆ (2020年1月12日 21時) (レス) id: ce3a9023ca (このIDを非表示/違反報告)
マリイ - リムル様とディアブロ大好きです ディアブロの名前私が付けたかったなぁ〜って思ってしまう← (2020年1月12日 19時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - 本当ですか!? 嬉しすぎます。 超ゆっくり更新ですが、ご期待に応えられるよう全力を尽くしますので、是非! これからもよろしくお願いします☆ (2020年1月9日 22時) (レス) id: ce3a9023ca (このIDを非表示/違反報告)
夢御神槌(プロフ) - すっごく面白かったです!!これからもがんばってください!!!!壁|ω・)ハイ ヒョッコリハン (2020年1月9日 21時) (レス) id: f59e7bfd64 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:彼方 | 作成日時:2019年11月16日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。