4 ページ9
.
.
13：54：11
「ふはーぁ、今日は超楽しかったぁ」
隣で有紗が布団にばふっと顔をうずめる。
「うん、ホントに。クレープもおいしかったし、可愛い服も見つけたし」
久しぶりに、あんなによく笑った。あんなにおいしいものを食べた。全てが、楽しかった。
だけど…楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
「でもさ、本当にAが元気になって良かった。…あたし、２人で買い物したり、こうやっておしゃべりしたりするのが夢だったの」
にこっと満面の笑みをこちらに向ける。その笑顔に胸がチクリと傷んだ。
「でもまだ完治したわけじゃないし…。多分、きっとこれから悪くなると思う」
「ちょ、弱気なこと言わないでよ！大丈夫、あたしが絶対治してあげるから！」
「…え？」
有紗はそばにあったポテチをひとつまみすると、意味ありげに笑った。
「あたし、今理系クラスで頑張ってるんだ。このまま頑張れば、先生に医学部も夢じゃないって言われた」
理系、医学部…それって、
「医者になる、ってこと？」
「ま、そーいうこと！
Aとずっと一緒にいたいと思ったし、Aみたいな子供たちを助けられたらなって」
言葉を失った。
ずっと一緒にいたい。
その言葉が胸に突き刺さりすぎて、なにも返事できない。
「やだー、Aなに泣いてんの！ほらほら、もう疲れてるんだよ。今日は早く寝て、明日朝早くからまたおしゃべりしよ！」
ぽんぽんと頭に手が置かれる。…暖かい。とっても、暖かい。
「うん、ありがとう」
そう言って小さく笑い、電気を消す。
電気が消えてからもぽつぽつと喋っていたけれど、いつの間にか有紗から返事が返ってこなくなった。
かすかな寝息が聞こえる。
ずっと一緒にいたいなんて思ってくれている人がこの世にいるなんて、思ってもいなかった。
大好きだったお父さんもお母さんも、私を置いて先にいなくなってしまうし、じいちゃんもばあちゃんもいない。私はひとりだと思っていた。
だけど…違ったんだね。
生きたい。
心の底から、そう思った。
だけど…
まくらもとにおいておいた懐中時計を開く。相変わらず、淡々と正確に数字が減っている。
命と引き換えに、約束を交わしてしまったことをひどく後悔した。今さら…バカみたい、私。
有紗の柔らかな寝顔を見ると、涙が止まらなかった。
.
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 75人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「病系」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
BERU - すごく感動しました。私は大切な人を失うという感覚はわかりません。もし大切な人を失ったら私はその時何を思うんでしょう(＞＜)でも大切な人は失いたく無いです。これからも大切に毎日毎日生きていきたいと思います。 (2018年7月8日 20時) (
レス) id: b33c82a94e (このIDを非表示/違反報告)
柴崎 彼方(プロフ) - ive kanadaさん» コメントありがとうございます。読んでいただきありがとうございましたm(_ _)m (2018年5月7日 0時) (レス) id: a8ce4c24a2 (このIDを非表示/違反報告)
ive kanada - 切ないですね。実は私も、昨年の夏に大好きな彼を失いました。辛いですよね。次の作品も頑張ってください。 (2018年4月29日 21時) (レス) id: d2d4448e52 (このIDを非表示/違反報告)
柴崎 彼方(プロフ) - 無気力零架さん» コメントありがとうございます！そうなんですか…(＞＜) (2017年4月3日 0時) (レス) id: a8ce4c24a2 (このIDを非表示/違反報告)
柴崎 彼方(プロフ) - 雷斗さん» 嬉しいコメントありがとうございます(*^_^*)頑張っていきたいとおもいます！ (2017年4月3日 0時) (レス) id: a8ce4c24a2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：彼方 | 作成日時：2015年3月26日 22時
