1日限りのシンデレラ ページ6
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毎日、なにもなく過ぎていく日々。ただただ、白い天井見つめて、1日が終わっていく。
「はい、Aちゃん、採血するね」
決まった時間に看護師が来て、たまに検査。その繰り返し。
お母さんもお父さんも、長い入院生活の途中に、事故で亡くなってしまった。
ひとり。
小さいころから入退院を繰り返して、学校にはまともにいけてない。
ただ、状態が良かった中学2年生…3年前は少しだけ学校に通えた。
――あのころが楽しかった。
「手術を行います」
そう言われたのは5日前。吐血した次の日に、主治医の手塚先生から言われた。検査の結果、今までよりぐっと病状が悪くなったことが判明。
もう、どうにでもなれって感じだった。だってこの手術、難しいみたい。成功するのは30%くらいって。
だからといって、逆にその手術をしないで放置しても、1か月もたないんだって。
手塚先生に背中を押されて、なんだか流れで手術は決まってしまった。
そして、2日後に迫った時だった。
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「お前の願いをかなえてやろう」
お昼の12時過ぎ、黒いベールに包まれたおばあさんが現れた。目をこすっても消えはしない。
…ついに死期が近づいたのかな。
「だーれ、あなた」
「…ほう、お前は私が見えるんだね。
よし、お前の願いをひとつ叶えてやろう。代償もとるが、な」
…いきなりそんなこと言われたってねぇ、信じられる年じゃないわよ。もう17歳。
「嘘だと思っているだろう。性格がひん曲がった娘だね」
「ひん曲がるわよ、そりゃ。病院から久しく外に出てないんだもの」
「まぁいいさ。お前はこのチャンスを逃すのかい?」
「そこまで言うなら…。でもそんな簡単な願いじゃないわよ、いいの?」
「いいだろう」
「…シンデレラになりたい」
幼い頃、よく病室でお母さんに呼んでもらった絵本、シンデレラ。
魔女に魔法をかけてもらい、美しくなるシンデレラを見て、あたしもこんなふうになりたいと思ったっけ。
自由になりたい。シンデレラみたいに、オシャレしたい。恋をしてみたい。遊びたい。
でも、そんな願い、ひとつも叶わなかった。
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BERU - すごく感動しました。私は大切な人を失うという感覚はわかりません。もし大切な人を失ったら私はその時何を思うんでしょう(><)でも大切な人は失いたく無いです。これからも大切に毎日毎日生きていきたいと思います。 (2018年7月8日 20時) (レス) id: b33c82a94e (このIDを非表示/違反報告)
柴崎 彼方(プロフ) - ive kanadaさん» コメントありがとうございます。読んでいただきありがとうございましたm(_ _)m (2018年5月7日 0時) (レス) id: a8ce4c24a2 (このIDを非表示/違反報告)
ive kanada - 切ないですね。実は私も、昨年の夏に大好きな彼を失いました。辛いですよね。次の作品も頑張ってください。 (2018年4月29日 21時) (レス) id: d2d4448e52 (このIDを非表示/違反報告)
柴崎 彼方(プロフ) - 無気力零架さん» コメントありがとうございます!そうなんですか…(><) (2017年4月3日 0時) (レス) id: a8ce4c24a2 (このIDを非表示/違反報告)
柴崎 彼方(プロフ) - 雷斗さん» 嬉しいコメントありがとうございます(*^_^*)頑張っていきたいとおもいます! (2017年4月3日 0時) (レス) id: a8ce4c24a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼方 | 作成日時:2015年3月26日 22時