31. 櫻井さんの、少しの真実。 ページ33
鬼の櫻井。
これも、俺が知ったことのひとつ。
そう、確かに櫻井さんは、いつでも誰にでも、人当たりがいいわけではない。
というよりむしろ、だいぶ悪い、方だと思う。
大野さんは別格として、松岡さんや山口さん、オペレーションセンター受付の佳乃さん、相葉さんにマル、それと、潤くんと多分、俺。
俺が今まで、櫻井さんが楽しげに話してるのを見たのは、多分それくらい。
あとの人は、業務的なこと以外話しているのを見たことがない。一緒に食事にいったとか、外での付き合いも、聞いたことがない。
そして。
着陸時にキャビンを盛大に揺らした副操縦士を運航停止処分にしたり、天候予測が甘かった先輩機長に意見したり、仕事の覚えが悪いCAを、自分のフライト機に2度と乗せなかったり...
とにかく、厳しい。マジでがちで厳しい。
先輩だろうが誰だろうが、容赦しない。
だけど、彼の言うことは正しくて、彼の技術も超一流。だからこそ、面と向かって刃向かうことは出来ず、陰でこそこそ、そしてついた名前が、“鬼の櫻井”。
「俺ね、高校が一緒だったの。いっこ先輩。しょーちゃんが。」
「そうなの?」
「ちなみにリーダー、にこ、先輩。」
「そうなのっっ??」
初めて聞いたと言えば、初めて言ったもんと笑いながら、相葉さんは続ける。
「二人ともね、空すきで。飛行機すきで。楽しそうにあの機種はどうだ、この機種はどうだって、いっつも話してた。」
俯いて、缶コーヒーのタブをあける。
「リーダーとは、卒業してそれきりだったけど、しょーちゃんとはね、海外に行ってパイロットになった後も、連絡を取り合ってた。俺が整備士になりたいって言ったらすごく喜んでくれてね、コックピットから見た空の話とか、たくさん話してくれた。だけど...」
缶をゆらゆら回しながら、俯いたまま、話し続ける。
「ある日連絡がとれなくなって... すごく心配してたらね... 3年前、しょーちゃんとリーダーがね、うちにやって来たんだ...」
3年前...俺が入社する1年前だ...
「しょーちゃんね。なんだか楽しそうじゃなかったの。あんなに好きだった空に行くのにね、すごく、悲しそうなの。俺心配で。今も、すごーく。」
俯いてた相葉さんが、顔をあげて少し、笑った。
「だけどね、最近すこーし、前のしょーちゃんに戻ってる気がするんだ。」
ニノたちのおかげかもね。
そう言って笑う相葉さんの瞳はまだ、哀しい切ない色を、宿していた。
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櫻宮 - 大野さんの繊細な心と翔くんの強い気持ち…それを優しく見守る3人が何だか"ほっこり"して凄く好きです!mioさんのお話もっと読みたいです!! (2019年11月7日 12時) (レス) id: 95d5f07b44 (このIDを非表示/違反報告)
リカ(プロフ) - こんにちは。先日、旅行に行って参りました。機内から空を見ていたら、もう一度物語が読みたくなりお邪魔させていただいています。2人の物語、5人の物語、幸せな気持ちになります。 (2017年9月4日 22時) (レス) id: c3477e2eb7 (このIDを非表示/違反報告)
mio(プロフ) - 沙羅さん» 沙羅さん。コメントありがとうございます。ふあふあ大野さん、感じて頂けて嬉しいです☆これからふあふあじゃない彼も、しょーくんとの揺るぎなさも、お届け出来たらなと思います!ラストシーズンまでぜひ、お付き合い頂けたら嬉しいです(^^)よろしくお願いしますっ♪ (2015年3月18日 9時) (レス) id: b1673f9bd6 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - 大野さんのあのふあふあかん最高です!櫻井さんの過保護な感じにきゅっときますね、笑色んな関係が見え隠れしてて読むのとてもわくわくします (2015年3月17日 10時) (レス) id: ca60bde7d3 (このIDを非表示/違反報告)
mio(プロフ) - えりんこさん» えりんこさん♪お返事遅くなりすみません(;_;)ありがとうございます。嬉しいな。麗しの青さんだなんて、ほんとに嬉しいです。えりんこさんのお話の、凛とした青さんも、私大好きです!なかなかうまく表現できなくて困っていますが、また読みに来て下さったら嬉しいです (2014年11月20日 17時) (レス) id: b1673f9bd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mio | 作成日時:2014年6月7日 22時