【ヒロアカ】轟兄さん３【男主】 (ページ5)

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嫌な思い出は忘れちゃえばいい

＿＿＿１０年前＿＿＿

息を殺して泣いていた

ヒーローになるために入った学校では俺はいつも優等生で

誰もがみんな俺にはかなわないと

さすが、エンデヴァーの息子だと褒めて、恨んで、嫉妬して

『ただいま…』

「お兄ちゃんっ！」

『焦凍今日は学校楽しかった？』

「…」

『休みたい時は休んでもいいんだよ』

「ううん、明日ね…参観日なんだけど」

『うん。俺が行くよ』

母さんの代わりにはなれないけれど俺がなんとかしなきゃ

寂しい思いをさせないように

でも、

「あれ、轟さん家の」

「あぁ、あの子が」

『…』

でも、母さんの代わりになれるわけなかった

みんなお母さんが来るのに轟さん家はいつもお兄さんが来る

そう言われているのはわかっていたし

きっと焦凍もクラスの子たちに言われていたに違いない

来なくていいって、来るなって言えばいいのに

「A少年！最近元気ないね！」

『あぁ…オールマイトか。なんかよう？』

「用はないんだが君を見つけてね！声をかけたってわけさ」

『そう、じゃぁ…俺。弟の面倒みなきゃいけないから』

「A少年！明日の体育祭頑張ってね！」

あぁ、そうだ

明日は体育祭だったっけ

これで目立てば俺のこと、みんなスカウトしてくれるのかな

「にゃー」

『…』

河川敷を歩いていると１匹の黒い子猫が段ボールの中で１匹

本当に子猫

ちっちゃくて、汚れてて。今にも死にそうなのに

小さい声で鳴いている

『かわいそうに、これじゃ生きてたって…っ！！』

今、今俺何て言おうとした？

何て思ったっ

死んだほうがマシだ

そんなこと、思った？

口を両手で覆った、こんな感情…

ヒーローになるやつの考えることじゃない

俺は子猫を抱えて家に走った

助けなきゃ、助けたいって思えよ

悔しい、情けない

走りながら俺は声を殺して泣いた

がむしゃらに

にゃー

細い声が耳に響きながら

こう、聞こえた

忘れちゃえばいい

忘れたいこと全部

私が消してあげると

・

「兄さん！兄さん！！」

声がして目がさめる

そこは病院なのか薬品の匂いがした

「兄さんよかった！」

「お兄ちゃん！もういきなり炎出すし倒れるしびっくりしたんだからね？」

・

『…あの、君たち。誰？』