離れないよ、蛸だから【吉田ヒロフミ】 (ページ14)

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『ヒロ君、出かけよ』

勉強しているヒロ君の背中に覆い被さりながら私はそう言った

少し意地悪してやろうかな〜くらいの軽い気持ち

「うん。いいよ」

なのにヒロ君は嬉しそうに言うと早速広げてた物を片付け始める

『…いいの？』

「もちろん」

『テスト近いじゃん』

「俺がAさんの誘いを断ると思ったの？」

『…』

彼の後ろで少しの罪悪感に苛まれていると立ち上がったヒロ君が上着を羽織る

「どこ行きたい？」

『…やっぱ勉強していいよ』

「嫌だね。俺はもうAさんと夜のデートする気満々だから」

ハンガーに掛けてある小さな白い上着を彼は手に取るとそれを私の後ろで広げるものだから反射的にそれに腕を通してしまう。

「Aさんから誘われるなんて嬉しすぎて俺どうにかなっちゃうかも」

『…もし明日も誘ったら？』

「明日も誘ってくれるの？」

首を傾けて聞き返す彼にまた意地悪を言ってみる

『…さぁ』

「行くに決まってるじゃん」

『じゃぁ、明後日も明明後日も誘ったら？』

「もちろん行く」

『…テストの日までずーっと誘ったら？』

「そんな幸せなことあるの？」

『…勉強しなよ』

「勉強どこじゃないだろ」

手を握られて引っ張られるとシンデレラのように靴をはかされてまた手を握られて部屋の外に出る

空気が冷たくてもう真っ暗な夜

「夜のデートどこ行く？公園で遊ぶ？」

『嫌よ。私高校生じゃないんだから』

「俺は高校生だよ」