【QK】十人十色【短編集】 (ページ32)

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六根の話。 ymmt ページ32

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人間には六根と六情がある

六根とは眼鼻耳舌身意であり
六情は喜怒哀楽愛憎だ

この2つは結びついているとも言われる。

例えばからいとつらいが同じ｢辛｣という字が使われていたりくるしいとにがいが同じ｢苦｣という字が使われていることだ。

僕はその中でも鼻の記憶が六情により結びついていると思う。

今日だってあいにくの雨だけど。

アスファルトが雨で濡れた匂いや土が濡れた匂いは何だかどんよりさせる。

例えば歩いている時に花の香りや食べ物の香りがしたら幸せな気持ちになる。

例えば。

大好きだった彼女が着けていた香水の匂いがふと香ったならば。

声も顔ももうぼんやりとしか思い出せない彼女。

なのに彼女のつけていた香水の香りだけは

何年経っても忘れないのだ。

君がこっぴどく振ったくせに

いつまでもいつまでも縛り付けてくる。

1度思い出すともうダメ。雨の匂いも花の匂いも、夏の匂いも冬の匂いも全て君とすごした日々を思い出す。

ふとした瞬間に君を思い出すのが悔しくて辛くて

でも逃げ出せそうにない。

ああ、どうして神様は六根と六情を結び付けてしまったのですか？

ぼくはいつまで苦しめば良いのでしょうか。