anytime （渡辺） (ページ5)

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『最近ちょっと寒くなってきたよね』

同僚兼友達のミキと肩を並べながら会社を出る。

ミキとは年齢も同じで仲良くなるのにそう時間はかからなかった。

しっかり者で頼れるミキは今では私のよき理解者。

「よね、人肌恋しくなるわー」

『わかる』

「 Aいい人居ないの？」

『紹介できる人はいないよ』

「そうじゃなくて、Aに！って意味」

『いないかなー』

「もう渡辺でいいじゃん」

『だーかーらー、なべはそんなんじゃないって』

「でもめちゃ仲良いよね、会ったことないからどんな人か分かんないけど」

なべのことはミキにも言ってない。

ミキのことを信用してないとかそういう訳じゃないけどこのご時世どこから情報が漏れるか分からないし

何かあった時に困るのはなべだし。

なべに迷惑はかけたくない。

だからミキには大学時代の友達とだけ伝えている。

横断歩道を渡ろうとしたらチカチカと信号が点滅し始め2人で立ち止まった。

「あ！そういえば、人肌恋しいで思い出したわ」

ミキがハッと何かを思い出したように呟いた。

『なに？どうしたの？』

「営業部の天堂さん分かる？？」

『あーいつもスーツパシッと着てる爽やかな人？』

そんな関わる機会はないけど私とミキの担当は

会社の受付、いわゆる受付嬢だから

社員の出入りの中で見かけたことはある。

あと後輩のミナミちゃんが

かっこいいーって騒いでたよーな気がする。

「そーそー！その人がAのこと気になるんだって」

『え？私？なんで？』

挨拶交わすくらいで話したこともほとんどないのに。

「 Aの営業スマイルに惚れたんじゃない？A愛想良いしかわいいし天堂さんのタイプっぽい」

『なにそれー、褒めてる？(笑) 』

「褒めてる(笑)」

信号が変わったのを確認して足を進めた。

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