鈴の音色 2【HQ 西谷夕】 (ページ19)

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第62話ページ19

西谷side

土曜日。
俺は龍の家での勉強会前に、何故か学校に来ていた。テスト前で立入ができない事も、部活が休みなのも知ってる。
けど、足が勝手にここに向かっていた。

西「…いるわけ、ねぇよな。」

前に吉村が、夜月さんは土曜日に学校にいる事が多いと言っていたから、もしかしたらと思った。それだけだ。

西「……別に普通の苗字、だよな。」

昨日帰ってから父さんや母さん、じいちゃんに聞いてみようか迷った。けど、なんとなく怖くて聞けなかった。

西「はぁぁぁ…」

溜め息なんて、らしくねぇよな…

『何してるの…』

西「どわあ！！！…って、夜月さん！？」

まさか本当にいたなんて…！マジかよでっけぇ溜め息、というか一人言聞かれちまったか！？
何してるの…と言われても夜月さんがいるかもと思って～なんて死んでも言えるか！！

西「いや、その…勉強会前の……散歩…」

苦し紛れの嘘ついたけど、ぜってぇバレてる…

『随分と複雑そうな顔してるけど。』

そんな顔、してたのか俺…

西「ちょ、いやぁ昨日遅くまで張り切って慣れない勉強してたらよ！」

本っ当に嘘が下手くそだな俺！もっとマシな嘘とかあっただろ！バカ正直な性格がこんなところで裏目に出ちまった。

『………そ。』

気づかれた…とは思うけど何も言わない夜月さんが歩き出そうとした。やっぱり、なんとなく哀しそうなあの表情。

西「なぁ、夜月さん……」

思わず出た呼び止める声が、自分でも驚くほど小さかった。

『…？』

西「…………っ、いや、なんでも…」

『そう。なら向かうけど。』

西「！…おぅ、一緒に行こうぜ！」

いつもみたいに、いつも通りの自分を装った。

『途中で雪と合流すると思う。』

西「吉村？あいつ龍の家は知らねぇのか。」

『詳しくは知らないらしいから。』

吉村に連絡してる姿をﾁﾗｯと見て思わず俯いた。
普通に話してるはずなのに、何故か遠くを見つめる夜月さんを見ていられなくなった。

絶対、変に思われてる。