第58話 ページ15
谷地side
私は前にお母さんから釘を刺された事があったからよく覚えていた。
谷「この間、私がお母さんに学校にものすごい美人さんがいたんだって話したんですけど…」
あの時のお母さんの顔が、いつもの表情とは違う何か複雑そうだったのは覚えている。
谷「夜月さんの名前を出した途端に…その……」
上手く言えずに黙ってしまったけど、ﾎﾟﾝｯと背中に温かさを感じた。
清「大丈夫。落ち着いて話して。」
清水先輩が優しく背中を支えてくれた。
再び口を開いてみる。
谷「お母さんが、外で軽々しくその名前を口にしないように。って…」
田「は？」
西「は？どういうこどだよ！？」
菅「西谷、最後まで聞こう。」
西谷先輩の声に驚いたけど、菅原先輩が制してくれた。やっぱり…怖い……
谷「わ、私も何で？って聞いたんですけど、教えてくれなくて…とにかく言うなって…」
私にも分からなかった。だから私は家でも夜月さんの事を口にすることはしなくなった。
でもあの時のお母さん…
谷「哀しそうでした…」
日「哀しそう？」
谷「いつも仕事でキリッとしてるお母さんの顔が…夜月さんの名前を聞いてから…なんだか…」
どうして話してくれないんだろう、私たちが知ってはいけない事なの？もし知ってしまったらどうなるの？
谷「すみません…これしか知らないんですが、何かあるんだと思うんですけど…」
家庭が厳しいのか、何か特別なスポーツとかやっているのかは分からない。
私はお母さんのあの言葉と顔が、探ってはいけないと訴えているように思えた。
澤「気にしてたこと、思い出させちまったな。」
東「話してくれてありがとな。」
菅「気にすんな。」
澤村先輩がﾎﾟﾝｯと頭に手を置いてくれた。
気になってるはずなのに、それ以上は聞いてこなかった。やっぱり3年生は大人だな。
他のみんなは複雑そうな顔してる。
けど、私も気になるのが本音なんだけど…
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作者名：極東華梛魏 | 作成日時：2021年8月2日 20時
