＊トリップをした少女＊【テニプリ】part5

194話*いつの間にこれシリアスになった?* ページ4

大石「がぁっ…!」

大石の呻き声が朝の静かなコートに広がる。

僕のボールは大石の腹部にめり込み

少し回転した後にポトリと地面に落ちる。



ラケットで防御どころか、

ラケット…いや、身体を動かす事自体出来ない。


それほど、速い。

自分で言うのも何だが、僕はのボールの速さはまだ、もっと速くなる。


きっと誰よりも速い。

レーザービームより、ずっとずっと。


とはいえレーザービームと打ち方は大体同じだからそんなに難しいもんでも無いけど。



A「まだまだ、もっと打たないと僕は満足できないよ」



僕はそう言ってもう一度サーブを打つ。

返事は要らない。

大石に僕のサーブを打ち返す事は出来ない。

大石はサーブ以外にボールにもう触れないだろう。



僕はボールを高く上げ、半ば自分の身体を反らすようにして

スパッと打つ。


ヒュンッと風を切る音が聞こえる。


そしてその一瞬後には

大石「がはっ!」

という大石の呻き声。



大石の口から吐き出される血の混じった唾液。



A「それ、最高」

もしかすると、僕は壊れているのかもしれない。

だってこんなにも大石の苦しむ顔が快感になる。

かつて苦しむ顔をみて快感を覚える事はあった。

でも…



ここまでの快感を覚えたのは、初めてだ。



大石「はっ!」

大石のその声と共に次は大石の手からサーブが放たれる。

A「その程度のサーブで何をしようって言うの?」

僕はまるで大石を馬鹿にするように軽く微笑んでから…

いや、"まるで"じゃなくて実際に馬鹿にしているわけだけども…

まぁ、そんな風に微笑んでから打ち返す。


大石「っ!」

A「サイクロンスマッシュ…の速いバージョン」

大石の左手の二の腕にあたった。

…あ、そうだ。

一応説明しておくけど肩から肘までの間は正式には「一の腕」と言う。

「二の腕」って言うのは間違いで、本当は肘から手首までの間を「二の腕」って言うんだ。

だから"大石の肘から手首の間にあたった"って言う事だから間違えない様に。



とりあえず大石はボールが当たると呻き声を出してしゃがみ込んだ。

腕からは血がにじみ出ている。

ハッキリと切れていない分じわっと滲んで広範囲で怪我をするから痛いだろうな。

滲んだ血がポトポトとコートに堕ちる。

整備された綺麗な緑に赤が染み渡り、茶色の円が出来てゆく。





A「後で洗って置いてもらわないとね。…汚い」



僕はそう言ってもう一度、ボールを持った。

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