二十四 ページ23
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足も傷めている慧さんの歩幅に合わせ、ゆっくりと町中を歩く。
「ご隠居様っ、そちらではないですっ」
「つれないねぇ雄也は。ここは見ない振りくらいしないと」
「前にそれして、行方不明になりかけたでしょっ!」
「古いこと覚えてんだから」
「つい先頃でしたよ」
「ワシももーろくしたもんだねぇ」
「嘘仰い、その先の飯屋の若い娘さん目当てのくせに」
「雄也がいじめるっ」
「はいはい行きますよー」
「驚きました?いつもこうですよ」
ご隠居様と俺のやり取りに、ぽかーんとしてる慧さんに苦笑で答えた。
盛大に文句を吐いてた慧さんも、いざ出てしまえば好奇心が勝る。
特に外へ出る用事もない上、あの事件後はほぼ籠りがちで。慧さんが『外』に出たのは本当に久方振りなのだそうだ。
…逆か。健康体であったなら、元々好奇心は旺盛なのだし何処に行くか目が離せなかったかも知れない。
ご隠居様が『散歩』と称したのは、外に連れ出したかった目的も入ってるのだろうか?
…どーだかなー。
散々回り道して、しまいには慧さんまであちこちに興味を示すのを軌道修正しつつ、とある店先で足を止めたご隠居に倣い見上げれば。
「山田屋…?」
ぱあっと慧さんの顔が輝く。
「これは薮屋のご隠居様、おいでなされませ」
「やぁ圭人、後でちょっとお願いを聞いておくれ」
すくりと立ち上がった、帳簿を付けていたらしい若い番頭は、キリリとした面差しで涼やかな目元も男らしい。
にこやかに挨拶してきた彼は、ご隠居様の影に居た慧さんを見るなり大層驚いた顔をした。
「けい…慧さんっ。ああこれはお坊っちゃまがお喜びに…誰かお知らせを」
圭人と呼ばれた番頭の指示で、やがて奥からバタバタと足音がする。
「慧がきたって?!」
ぅわ。なんて美男子なんだろう。
走り込んできたのは、慧さんとそう歳が変わらなさそうな若者だった。
役者かと思うような端整な顔立ちは、店内にいた女性たちを一気に色めき立たせる。
ここは…乾物屋?
独特の香りと共に、所狭しと置いてあるのは昆布や鰹節、干し椎茸や小魚、味噌樽…見た目判らない物まで様々だ。
どーん!と音がするような勢いで抱きついてきた坊ちゃんを、支えきれず慧さんの身体が傾く。
咄嗟に支えた俺に初めて目線を流してきたこの店の坊ちゃんは。
…おやおや、あからさまな敵意なんてどのくらい振りだろうな。
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夏夢(プロフ) - mikaさん» mikaさまありがとうございます(*≧∀≦)読み返して頂いてるなんて嬉しすぎます!焦れったい展開で申し訳ないですが、もう少しお付き合いくださいませ♪ (2019年9月1日 20時) (レス) id: 6404b316b5 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» ひかセンセーは周りのことなら敏いのですwそーよね、仕掛けるの見たかったっす!慧坊っちゃんも動くかなー?ヒャヒャヒャ♪ (2019年9月1日 20時) (レス) id: 6404b316b5 (このIDを非表示/違反報告)
mika(プロフ) - このお話が好きすぎて何度も読み返しています…!慧さんと雄也さんの関係もさらに動きそうな予感…!?続きを楽しみにしてます♪ (2019年9月1日 19時) (レス) id: 8f2d116da6 (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - いやぁぁんん。光先生ッタラァー。察しが良すぎるー。そして、、なんですと?仕掛けたかったですと??なぁんてこと!!見たかったぞwwwそして、かわいいヤキモチもいい!さすがコウタさんの選んだ人〜〜。さて?色々バレちゃったシー。味方が増えた! (2019年8月28日 15時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» 私もびっくりだよゆやさん(笑)一体誰に教わったんだー!そんなテクで落とした坊っちゃん大変にならないといーけど♪うひゃひゃ (2019年8月2日 20時) (レス) id: 6404b316b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏夢 | 作成日時:2016年10月17日 11時