Dekigokoro・別館４

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ybsideより数時間前。


in.


(今日のも見るかなぁ、やぶ)

週一の、早朝仕事を終わらせてふっと思う。

あのコーナー、よく続いてると思うけど、やぶのツッコミも然りなわけで。

ある意味平和な絵面には言ってこないけど、一言あり！な時の追及といったらねぇ…。
なーんて、リアクション欲しくてUPしてるおれもおれね。

「伊野尾さん！お疲れ様です！」

「おつかれさまでーす」

小走りしてくる件のアナウンサーさん。
この人も犬系だなぁ。

「何か照れますねっ、写真っ」

「あー、ご協力ありがとうございますぅ」

「いえいえこちらこそ！ネタにして頂けて嬉しいですよ！お椀、大事に使わせて頂きますね」

「こちらも有り難く使わせて頂きます」

歩き出しながら礼を言い合う。
もう慣れたけど、最初の頃はネタ探すの疲れたんだよねぇ。今でこそロケ先でささっと撮ったりもするけど、結構気を使ったもん。
付き合いもそこそこの長さになってる今、共演者は最も手近なネタ提供者だよ。

「落ち着いたらメシ行きたいですねぇ」

「ですね。じゃ、お疲れ様です」

最後は大体そんな〆言葉で終わる。
行ける確証もないこのご時世だから、曖昧な返事は自然だ。

行けるとなったら、もちろんネタにしますけど。

大体、やぶの基準が間違ってんの！
そもそもおまえ以外のオトコなんて…。

(まぁ…)

ウザ絡みしたいんだろうな、多分。

「しょーもな…ぅげ」

偶然鏡に映った己に引いた。なにこのデレ顔！
ないないない！これから准教授だぞ！しっかりしろっ。

「…ぁ、そーいや今回は割とすぐ会えるんだっけ」

改編期大型音楽番組の出演が、すぐにある。
あいつも最近忙しくて、のんびり出来てないんだよなぁ…。


「伊野尾ー、準備できたか」

「ぁ、はい行きまーす」

忘れ物がないか、確認して楽屋を出た。


他愛ないやりとりが、いつでも出来たらいいのにな。
丁度節目じゃん、おれたち。


なぁ。

いっそのことプロポーズでもしてみてくんね？
いつも捻くれてるおれが、今なら素直にYESって言うかも…。

「…なんだ」

車に乗り込んで思わず口にしてた。

「どした？忘れ物か？」

「大丈夫でーっす」

怪訝そうにバックミラーを覗き込んでたマネージャーが、納得したのかエンジンを掛ける。

振動を感じながらシートに身を沈めた。

なーんだ。
おれ待ってんのか。



あいつからの。


end.

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